デマンド監視システムとは、電力使用量をリアルタイムで監視し、電気料金の上昇を未然に防ぐシステムです。電力コストの削減と省エネ対策が企業の重要課題となるなか、デマンド値の適切な管理は経営効率化に直結します。
本記事では、デマンド監視システムの基本機能から、導入するメリット、選定ポイントまで、詳しく解説します。
電力デマンド監視システム(装置)とは
デマンド監視システムは、事前に設定したデマンド値を超過しそうな際に、管理者へ警報ランプやブザー、メールなどの方法で通知してくれる仕組みです。
まずは、デマンド監視システムについて理解するうえで重要な「デマンド値」や、システムにできること、類似するシステムとの違いなどについて見ていきましょう。
「デマンド値」の詳細とデマンド値の管理が必要な理由
デマンド値とは、電力会社との取引においては「30分間の平均電力のこと」を指します。
例えば、ある30分間のうち最初の15分間で400kWを、残りの15分間で100kWを使用したケースで考えてみましょう。その30分間のデマンド値は以下のようになります。
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(400kW × 15分 + 100kW × 15分)÷ 30分 = 250kW |
デマンド値は毎時ごと0~30分、30分~60分に計算され、1日(24時間)のなかでは48回計測が行われます。

1ヶ月間で最も高かったデマンド値が「最大デマンド値(最大需要電力)」です。当月を含む直近12カ月の間で最も高かった最大デマンド値は、電気料金の算定に使用されます。
つまり、一度でも最大デマンド値を更新すると、以降1年間の電気料金に影響するのです(高圧小口電力契約50~500kW未満の場合)。

したがって、電気料金の削減を図るには、デマンド管理システムによるデマンド値の監視が欠かせません。
デマンド監視システムでできること
デマンド監視システムは、デマンド値を24時間計測し、あらかじめ設定した目標値(最大デマンド値)を超えそうになると、警報ランプ、ブザー、メールといった方法で管理者に通知を行います。
管理者は、設備の運転を手動で調整することで、最大デマンドの抑制が可能です。

デマンドコントロールシステム(デマンドコントローラー)との違い

デマンド値を管理するシステムには、デマンド監視装置のほかに「デマンドコントロールシステム(デマンドコントローラー)」があります。
大きな違いは、デマンドコントロールシステムは警報を行ったうえで設備を「自動で制御する」という点です。
デマンド監視システムは、あくまでデマンド値を監視するものであり、設備の制御は手動となります。
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デマンド監視システム |
デマンドコントロールシステム |
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設備を制御する方法 |
手動 |
自動 |
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2つを比較した際の導入コスト |
安い |
高い |
デマンド監視システムは、コストの安さがメリットですが、手動で対応する手間がかかります。そのため、小規模の施設におすすめです。
デマンド監視システムのメリット
デマンド監視システムを導入する主なメリットは、以下のとおりです。
- 電気料金を削減できる
- データに基づいた対策を立てられる
- 会社全体での省エネ意識の向上につながる
- 環境負荷の低減に貢献する
それぞれ見ていきましょう。
電気料金を削減できる
デマンド監視システムを活用すれば、最大デマンド値の更新を未然に防ぎ、電気料金の上昇を抑えることが可能です。
ただし、警報が通知された際には手動で負荷を制御する必要があるため、対応の遅れには注意が必要です。どの設備を制御するかリスト化したり、設備の配置図を作成したり、担当管理者を決めておくなど、事前に体制を整備しておきましょう。
データに基づいた対策を立てられる
データ閲覧が可能なシステムを選べば、「どの時期や時間帯に電力使用量が多いか」「どの設備が多くの電力を消費しているか」といったことを把握できます。
例えば、空調の消費電力量が多いとわかれば、設定温度の見直しなど、具体的な省エネ対策を立案できるでしょう。やみくもに省エネ対策を実行するのではなく、データに基づいて対応するため、確実な効果と無理のない省エネが可能になります。
会社全体での省エネ意識の向上につながる
システム導入の目的を周知したり、実際に警報を受けたり、日々の電力使用の傾向を提示したりすれば、従業員が電気の使い方を見直すきっかけとなります。会社全体での節電行動が自然と促進され、省エネ活動が組織として定着する効果が期待できるでしょう。
環境負荷の低減に貢献する
発電時に排出されるCO2は地球温暖化の主要な原因となる温室効果ガスです。そのため、データに基づいた省エネ対策を実行し、会社全体で省エネ意識を高めることで電力使用量を削減すれば、CO2排出の抑制につながり、持続可能な社会の実現に貢献できます。
デマンド監視システムを選ぶポイント
デマンド監視システムを効果的に活用するためには、自社のニーズに合った機能と仕様を選択することが重要です。
以下のポイントを参考に、最適なシステムを選定しましょう。
チェックポイント①機能性
ニーズに適した機能を有するかどうかを確認する必要があります。
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警報の方法 |
警報の方法は、システムによってランプ・ブザー・メール・表示盤(モニター)などがあるため、警報への気づきやすさ、運用方法に応じて選ぶ |
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データ閲覧機能の有無 |
電力使用量や最大デマンド値などのデータの蓄積や、グラフ表示、レポート出力機能が備わっていると、分析や改善策の立案に役立つ |
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機能の拡張性 |
ニーズに応じて自動制御機器を追加できるかなど、将来的な拡張の可能性を考慮する |
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設備ごとの電気の使用実績を計測・記録する機能の有無 |
設備ごとの消費電力を細かく把握できる機能があれば、特定の設備の制御や運用改善にも役立つ |
チェックポイント②設置のしやすさ
デマンド監視システムには、オンプレミス型・クラウド型の2つの種類があります。クラウド型は工事が簡易に済み、比較的設置工事費が安くなる傾向があります。
チェックポイント③サポート体制
システム導入時や運用中に必要なサポート体制も重要です。導入時に設定や操作方法の支援が受けられるか、運用実績の報告や省エネ提案などのサポートを提供しているかなどを確認しましょう。
自社が求めるサポート内容に対応できる体制が整っていれば、運用トラブルや疑問点の解消がスムーズになります。
チェックポイント④コスト
初期費用が無料なものもあれば、設置工事が大規模で初期費用が高額になるものもあります。月々のコストも、機能やサポート体制の充実度、メンテナンスが含まれているかなどによって変わります。予算に応じて検討することが大切です。
電気代を効果的に抑えるならPanasonic HVAC CLOUD
「Panasonic HVAC CLOUD」は空調設備をコントロール・管理するシステムであり、デマンド監視システムではありません。
しかし、空調は建物全体のエネルギー消費において最も大きな割合を占める設備です。そのため、企業の電気代を削減するという点では、高い効果を期待できるでしょう。

※用途により割合は異なります
また、デマンド監視システムは警報に対して手動での対応が必要で、担当者の手間がかかります。とはいえ、自動制御できるデマンドコントロールシステムはコスト面が懸念となるのが現実です。
「Panasonic HVAC CLOUD」なら、建物全体のエネルギー消費において最も大きな割合を占める空調設備に対し、AIが自動で運転制御を行うため、効率的かつ効果的に電気代削減に貢献します。
具体的には以下のようなことが可能です。
- AI省エネコントロール
・AIが施設情報・利用者の空調設定・気象情報・時刻設定について学習し、その外気温度や時刻に対して適切な設定温度に自動調整
・人による過剰な快適運用を減らすことで、実施検証で年間約20%の空調消費電力量削減効果を確認(※2)
- 空調運転の一括遠隔管理
- 空調の消費電力量や設定温度の可視化
・これによりムダを発見し、具体的な節電対策を講じることが可能に
・データを蓄積して比較することで、節電対策を講じたあとの効果を確認することも可
- 警報メール通知
・遠隔で異常を検知し、夏季・冬季に「故障に気づかず使用できない」といった事態を未然に防ぎやすい
・初動対応の際に現地で確認を行わなくて良いため、工数の削減になるほか、修理や交換などの対応がスムーズに行える
(※1)2023年2月時点 空調業界当社調べ。
(※2)1年間、関東地方の2つの異なる物販店舗(約1,000㎡)の施設で検証。「設定温度自動リターン」機能(一定時間で指定した温度設定に戻る機能)との比較。
規模によって変わるものの、機器の設置は早ければ1時間ほどで完了します。導入後は専任の担当が運用をサポートするため、まずはお気軽にご相談ください。
まとめ
デマンド監視システムは、電力使用量をリアルタイムで監視し、電気料金の上昇を未然に防ぐ重要なツールです。30分間の平均電力であるデマンド値を適切に管理することで、最大デマンド値の更新を防ぎ、1年間にわたる電気料金の上昇を回避できます。
システム選定においては、機能性、設置のしやすさ、サポート体制、コストの4つの観点から総合的に判断することが重要です。特に空調設備は建物全体のエネルギー消費の大きな割合を占めるため、効果的な電力管理には空調制御が欠かせません。
また、今回ご紹介した「Panasonic HVAC CLOUD」は、AIが空調設備の運転制御を自動で行うことで、約20%の空調消費電力量削減を実現しながら快適性も両立できます(※)。
契約電力の基準となるデマンド値をデマンド監視システムで抑えつつ、日々の運用の電力は「Panasonic HVAC CLOUD」のような省エネソリューションを活用して削減することが、今後の電力削減手法のスタンダードとなるでしょう。
(※)1年間、関東地方の2つの異なる物販店舗(約1,000㎡)の施設で検証。「設定温度自動リターン」機能(一定時間で指定した温度設定に戻る機能)との比較。