6月 30, 2025
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デマンド電力とは?意味・電気料金への影響・超えた場合について解説

デマンド値は、高圧受電の需要家が電気料金の節約を図るうえで非常に重要な要素です。電気料金の仕組みやデマンド値の考え方を正しく理解し、適切な対策を講じることで、無駄なコストの発生を防ぐだけでなく、電気料金の削減にもつながるでしょう。

この記事では、デマンド値の意味や電気料金への影響、デマンド値が契約電力を超えた場合の対応について詳しく解説します。デマンド値を抑えるための具体的な方法もあわせて見ていきましょう。

 

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デマンド電力とは「30分間の平均電力」のこと

デマンド値とは、一般的には瞬時電力値のことを指しますが、電力会社との取引におけるデマンド値は、30分間の平均電力のことです。

デマンド値は、毎時ごとに「0~30分」「30~60分」の2回計測されます。1日は24時間あるため、1日に計48回のデマンド値の計測が行われることになります。

例えば、ある30分間にわたり400kWの負荷を一定して使用した場合、その時間のデマンド値は400kWです。また、最初の15分間で500kW、後半の15分間で300kWを使用したとしても、平均すると同じく400kWとなります。

このように、一時的に電力を多く使用しても、同じ30分間内で使用電力量の平均値を抑えられるように調整すれば、電力デマンド値を抑えることが可能です。

■デマンド値の例

毎時ごとの30分

使用電力と使用時間

デマンド値

(30分間の平均電力)

0時0分~0時30分

・400kW×30分

400kW

0時30分~1時00分

・500kW×15分

・300kW×15分

400kW

=(500kW×15分+300kW×15分)÷30分

1時00分~1時30分

・500kW×30分

500kW

 

デマンド電力は電気料金の計算に使われる

デマンド値は、電気料金を決める際に用いられる指標です。


具体的には、1カ月間の中で最も高かった30分間の平均電力(デマンド値)を「最大デマンド値(最大需要電力)」と呼び、この値が電気料金の算出に使われるのです。

デマンド 電力_02

電気料金は一般的に「基本料金」「電力量料金」「再エネ賦課金」の3つで構成されています。最大デマンド値は、使用量に関わらず毎月固定で発生する基本料金に影響します。

基本料金を算出する際に使われるのが「契約電力」であり、これが最大デマンド値によって決定されるのです。契約電力とは、電力会社との契約で毎月使用できる最大電力のことを指します。

 

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デマンド電力が契約電力を超えると電気料金が見直される

 契約電力は電力会社との契約によって上限が定められています。それを超えて使用した場合には「基本料金の見直し」または「契約超過金の支払い」が必要になります。

契約種別

超えて使用した場合

高圧小口電力契約(50~500kW未満)

基本料金の見直し

・高圧大口契約(500~2,000kW)

・特別高圧契約(2,000kW)

契約超過金の支払い


ここからは、契約種別ごとに詳しく解説します。

 

高圧小口電力契約(50~500kW未満)の場合

高圧小口電力契約(50~500kW未満)の場合、デマンド値が契約電力を超えると、その最大デマンド値をもとに計算した基本料金が以降1年間適用されることになります。

つまり、一度でも最大デマンド値が上昇してしまうと、以降1年間の電気料金が高くなってしまうのです。


デマンド 電力_03

高圧大口契約(500~2,000kW)・特別高圧契約(2,000kW)の場合

高圧大口契約(500~2,000kW)および特別高圧契約(2,000kW)の契約電力は、電力会社との協議によって決まります。この際、直近12カ月の最大デマンド値や負荷設備の容量などが考慮されるため、協議によって決められた契約電力を超えて使用した場合には、契約超過金を支払わなければなりません。

また、再度協議が行われ、契約電力が変更されることもあります。

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電気料金を削減するにはデマンド電力を抑える必要がある

上述のとおり、一度でも最大デマンド値を更新してしまうと電気料金は高くなります。つまり、「デマンド値を下げる=デマンドコントロール」を行えば電気料金の高騰を防ぐことができ、電気料金の削減にもつながるのです。

デマンド 電力_04

デマンドコントロールを行う方法として「ピークカット」と「ピークシフト」があります。


  • ピークカット
    電力使用量そのものを減らして最大デマンド値のピークを抑える

  • ピークシフト
    電力使用量の多い時間帯から少ない時間帯に活動をシフトすることで最大デマンド値のピークを抑える

 

それぞれの方法について、詳しく見ていきましょう。

 

ピークカット

ピークカットとは、1日のなかで電力使用量がピークとなる時間帯の電力使用を抑える手法です。

デマンド 電力_05

電力使用量が最も多い時間帯に電力使用を減らすことで、最大デマンド値の更新を防ぎます。ピークカットの具体的な方法としては以下のようなものがあります。


1.不要な設備の運転を停止
(例:誰もいない部屋の空調を停止する)

2.最適な運転に調整
(例:空調の温度を21℃から28℃に調整する)

3.設備の省エネ化
(例:省エネ性能に優れた空調や、人感センサー照明への交換)

4.再生可能エネルギーや蓄電池の導入
(例:発電した電気を使う、発電し蓄電池に貯めておいた電気を使う)


このうち、[1]と[2]の実施に効果的なのが「デマンドコントロールシステム」の導入です。デマンドコントロールシステムとは、あらかじめ設定したデマンド値(目標値)を超えそうになると、管理者に対して警報ランプやブザー、メールなどで通知したうえで、自動で設備の運転を制御し、電力使用を抑えるシステムのことを指します。

手動での節電は管理者の手間がかかるうえ、具体的な電気の使用実績や効果の把握が困難です。デマンドコントロールシステムなら自動制御してくれるだけでなく、データによって電力使用量が見えるため具体的な取り組みや改善が可能になります。

ピークシフト

 ピークシフトとは、電力使用量がピークとなる時間帯から、ほかの時間帯に電力使用をシフトさせる手法です。

ピークカットが電力使用量そのものを減らす取り組みであるのに対し、ピークシフトでは電力使用量は変えずに、電力の使うタイミングや買うタイミングを調整します。

デマンド 電力_06

具体的には、電力需要が集中する日中の稼働を、早朝や夜間に分散させる方法が挙げられます。また、電力使用量の少ない時間帯に蓄電池を充電しておき、日中のピーク時に使用することでも、ピークシフトの実現が可能です。

デマンド電力の改善や使用エネルギーの削減をパナソニックがサポート

 パナソニックでは、空調に関するソリューションを提供しており、デマンド値の改善や使用エネルギーの削減をサポート可能です。

建物全体の消費電力量のうち、空調が占める割合は50%にも達する(※)と言われています。そのため、空調の電力使用量を適切に管理することは、建物全体のエネルギー効率を高めるうえで極めて重要です。

(※参照)関東経済産業局「中小企業の支援担当者向け省エネ導入ガイドブック」
※用途により割合は異なります
※集会場の場合

パナソニックの「デマンドウォッチャー」は、デマンド値をリアルタイムで監視し、ピーク電力の抑制や契約電力の超過防止をサポートするシステムです。警報機能やデータ記録が可能で、電気料金の削減や効率的なエネルギー管理に役立ちます。

また、「Panasonic HVAC CLOUD」は、オフィス・店舗用エアコンにセットすることで省エネと快適の両立を実現するクラウドシステムで、以下のようなことが可能です。

デマンド 電力_07


  • 空調運転の遠隔管理
    ・A店舗・B店舗・C店舗のような複数の建物を一括で管理可能
    ・効率的な管理を実現

  • 消費電力・設定温度の可視化
    ・物件全体と、その物件に設置されている空調設備ごとに設定温度・消費電力量の推移をグラフで可視化
    ・これによりムダを発見し、具体的な節電対策を講じることが可能に

  • 警報メール通知
    ・空調機器に異常があった場合、エラーコードをメールで通知
    ・遠隔で異常を確認できる
    ・現地での確認の手間が省けるため、修理や交換などの対応の手配がスムーズに行える

  • AI省エネコントロール
    ・業界初のAIによる運転制御機能(※1)
    ・施設情報・利用者の空調設定・気象情報・時刻設定をAIが学習し、外気温度や時刻に応じて自動で設定温度を調整
    ・人による過剰な温度下げを減らすことで、実施検証では1年間で約20%の消費電力削減効果を確認(※2)
    ・快適性を損なわずに省エネを実現する

 

デマンド制御は、電力使用のピークを抑えるために有効な手段ですが、設備機器を停止することで快適性を犠牲にしてしまうこともあります。

「Panasonic HVAC CLOUD」なら、AI省エネコントロールを活用して、快適な環境を保ちながら無理のない省エネを実現可能です。

貴社のご要望や運用状況に応じて、最適なプランをご提案いたします。ぜひお気軽にお問い合わせください。

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(※1)空調機業界において、当社調べ(2023年3月8日時点)
(※2)2022年6月~9月に関東地方の物販店舗(約1000 m2)の2施設で検証。実際の省エネ効果は、使用環境等の条件により異なります。

まとめ

デマンド値は30分間の平均電力を示し、そのなかでも1カ月間で最も高かった値も「最大デマンド値」と呼びます。この最大デマンド値は電気料金に影響するため、日常的な電力使用の管理、すなわち「デマンドコントロール」が欠かせません。

具体的な対策としては、ピーク時の電力使用を抑える「ピークカット」や、使用する時間帯をずらしてピークを避ける「ピークシフト」といった方法があります。ピークカットにおいて効率的かつ効果的に行うなら、あらかじめ設定した目標値に応じて自動制御を行うデマンドコントロールシステムの導入も一手です。

パナソニックでは、建物の規模やお客様のご要望に応じた最適なシステム選びをご提案します。電力コストの見直しや設備管理の効率化をご検討中の方は、ぜひお気軽にご相談ください。電気料金の削減に向けて、デマンド値を適切に管理していきましょう。


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