空調管理システムは、快適な室内環境を維持するうえで欠かせない設備です。オフィスビルや商業施設などの建物において、温度調整機能だけでなく、そこで過ごす人の健康や、生産性にも大きく関わります。
本記事では、空調管理システムの基本的な意味から重要性、種類、効果的な運用方法などについて解説します。
\空調の快適性・省エネを両立/
空調管理システムとは
空調管理システムは、建物の室内環境を最適な状態に保つための設備です。単なる温度調整だけでなく、湿度管理、換気機能、気流制御など、快適な空間づくりに必要な複数の機能を統合的に管理します。
ここでは、空調管理システムの基本的な定義と、よく混同されがちなエアコンとの違いについて、詳しく解説します。
4つの機能を備えたシステムのこと
空調管理システム(空気調和設備)とは、以下の4つの機能を備えた機器および付属設備の総体であると、建築物衛生法において定義されています。
- 温度の調整
- 湿度の調整
- 空気の清浄(換気)
- 気流の調整
建築物衛生法において、空気調和設備とは、「エア・フィルター、電気集じん機等を用いて外から取り入れた空気等を浄化し、その温度、湿度及び流量を調節して供給(排出を含む。)することができる機器及び附属設備の総体」をいいます。すなわち、浄化、温度、湿度、流量の調節の4つの機能を備えた設備のことをいいます。
空調管理システムとエアコンの違い
空調管理システムは、エアコンとは異なるものです。エアコンには「空気の清浄(換気)」機能が備わっていないため、建築物衛生法で定める空調管理システムには該当しません。
空調管理システムとしての条件を満たすためには、エアコンに加えて換気設備を併設し、4つの機能をすべて備える必要があります。
つまり、エアコンは空調管理システムの一部であり、完全な空調管理システムを構築するには追加の設備が必要です。
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空調管理システムの重要性
空調管理システムは、建物内で過ごす人々の健康と快適性を保つために不可欠な設備です。
室内環境の質は、体調や作業効率に直接的な影響を与えるだけでなく、エネルギー消費や環境負荷にも大きく関わります。
空気の質や温度が体調に影響する
人が1日で摂取するものを重量比で見ると、空気が83%、食べ物が7%、飲み物が8%という割合になります。この数字からも明らかなように、私たちは日常生活の中で非常に多くの空気を無意識に吸い込んでいます。
さらに、その空気のうち約57%は室内で吸い込むため、室内空気の質は重要な要素です。例えば、換気が不十分な空間ではCO2(二酸化炭素)濃度が高くなり、呼吸数の増加や頭痛、めまいといった健康障害を引き起こすことがあります。
空調管理システムには空気の清浄(換気)機能があり、汚れた空気を外に排出し、新鮮な外気を取り込むことで室内空気の質を改善し、そこで過ごす人の健康を維持します。
また、室温も体調を大きく左右する要素です。室温が低いと血圧の上昇や睡眠の質の低下を招き、室温が高いと熱中症の危険性があります。空調管理システムなら、季節や時間帯に応じて最適な温度を保つことができるため、こういった健康障害を防ぐことができます。
室内環境が作業効率や生産性に影響する
室内環境は、働く人々の作業効率や生産性に大きな影響を与えます。
例えば、室温が低すぎることで睡眠の質が低下すれば、集中力の低下や体調不良を招き、業務のパフォーマンス低下を招きます。また、湿度が高すぎると不快感が増し、逆に低すぎると乾燥による疲労感や肌荒れなどの問題が発生するでしょう。
空調管理システムにより、空気の質を最適に保てば、作業に集中できる快適な環境が整い、結果的に業務効率や生産性の向上につながります。
空調の最適な稼働が省エネ効果に影響する
空調管理システムによって、季節や時間帯に応じて空調が最適な出力で稼働することで、必要以上のエネルギー消費を抑え、電気代の削減につながります。特に、大型のビルや施設、多店舗・多拠点を一括で管理する場合などは、空調管理システムがもたらす省エネ効果は大きいです。
また、最近では小中規模の施設でも、電気代削減に加え、環境問題への対応や人材不足による管理工数の削減のために導入が進んでいます。無駄なエネルギー消費の削減は、近年重要性が高まっているカーボンニュートラルや脱炭素にも貢献するため、企業の社会的責任の観点からも重要な取り組みといえるでしょう。
空調管理システムの種類
空調管理システムには、設置する建物の用途や規模に応じて、さまざまな種類があります。効率的で経済的な空調管理には、適切なシステムを選択することが重要です。
ここでは、目的別の分類と空調方式による分類について詳しく解説します。
目的別の種類
空調管理システムは、その目的によって「保健用空調(対人空調)」と「産業用空調」の2種類に分類されます。それぞれ、設置される建物や求められる性能が異なります。
保健用空調(対人空調)
保健用空調は主に人が快適に過ごすことを目的とするものです。オフィスや病院、商業施設といった建物が対象です。
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産業用空調
産業用空調は、人ではなく製品や設備の品質維持・管理を目的としたものです。工場や倉庫、サーバールームなどの施設で用いられています。
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空調方式の種類
空調管理システムには大きく「パッケージ方式(個別空調方式)」と「セントラル空調方式(中央空調方式)」の2種類があります。
パッケージ方式(個別空調方式)
パッケージ方式(個別空調方式)は、各部屋やフロアごとに空調機器を設置し、それぞれ独立して温度や風量を管理できる空調方式です。
部屋・フロア単位で空調の設定を自由に変更できるため、用途や利用人数が異なる中小規模のテナントビルに多く導入されています。使用頻度や時間帯に合わせた柔軟な運用が可能であり、エネルギー利用の最適化が図れます。
例えば、使用していない会議室の空調をオフにするといった省エネ運転ができる点は大きなメリットです。
一方で、個別の運用管理には手間がかかり、使い方によっては過剰な温度調整によりエネルギーを無駄に消費してしまう可能性があります。
こうした負担やエネルギーの無駄を軽減する手段として、個別空調の一括管理や自動制御が可能なシステムの導入も有効です。
例えば、「Panasonic HVAC CLOUD」を活用すれば、AI省エネコントロールにより、「施設情報」「日々行う空調設定」「気象情報」「時刻情報」をもとに、適正な設定温度を学習し、設定温度を自動制御します。このAI省エネコントロールにより、約20%(※)の消費電力量削減効果を実現しました。
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※1年間、関東地方の2つの異なる物販店舗(約1,000㎡)の施設で検証。「設定温度自動リターン」機能(一定時間で指定した温度設定に戻る機能)との比較。
セントラル空調方式(中央空調方式)
セントラル空調方式(中央空調方式)とは、冷凍機やボイラーなどの熱源機を中央機械室や管理室に集めて一箇所でコントロールする空調方式です。一括で管理することから、冷暖房の効率が高く、エネルギーコストの削減につながります。
また、建物内の温度を均一に設定でき、部屋やフロアごとに温度差が生じにくいのも特徴です。水・温水を建物内に循環させることで調温を行うため、設計の自由度も高くなっています。
ただし、部屋やフロアごとに柔軟な設定ができないため必要のない空間にも冷暖房が供給されることや、導入時の設備費用が高額になりがちである点を考慮しなければなりません。
省エネ効果が高く、部屋ごとの温度差を小さくできることから、大規模なオフィスビルや総合病院といった施設を中心に導入されています。
快適な空間づくりには空調管理システムのメンテナンスが必要
空調管理システムは、快適で健康的な室内環境を維持するうえで欠かせない設備ですが、その性能を長期的に安定して発揮させるためには定期的なメンテナンスが不可欠です。
メンテナンスを怠ると、空気の通り道であるフィルターが目詰まりして換気機能が低下したり、湿気がこもることでカビが発生したりしてしまいます。
空調管理システムを設置している場合は、「居室」の空気環境が下表の基準におおむね適合するよう、維持管理する努力義務が課せられています。
なお、法的に順守する義務があるのは、ビル衛生管理法の対象である特定建築物(規模の大きい商業施設、オフィスビル、学校など)のみですが、努力義務はすべての建築物に課されていることに留意しましょう。
浮遊粉じんの量 |
0.15 mg/m3以下 |
一酸化炭素の含有率 |
100万分の6以下(=6ppm以下) |
二酸化炭素の含有率 |
100万分の1000以下(=1000 ppm以下) |
温度 |
18℃以上28℃以下 (居室における温度を外気の温度より低くする場合は、その差を著しくしないこと) |
相対湿度 |
40%以上70%以下 |
気流 |
0.5 m/秒以下 |
ホルムアルデヒドの量 |
0.1 mg/m3以下(=0.08 ppm以下) |
また、第一種特定製品に該当する業務用空調は、フロン排出抑制法により簡易・定期点検の実施や、フロンが漏れた際の対処・報告について義務付けられています。
「Panasonic HVAC CLOUD」なら、冷媒漏えい診断サービスにより簡易点検を自動化できるため、点検忘れによる罰則リスクを避けつつ、管理工数の大幅な削減も可能です。
空調機本体の異常をメールで通知する機能も備わっているため、現地に出向いて状況を確認する手間が省け、管理工数の削減と迅速な対応を可能にします。また、故障を見逃すリスクを軽減することもできます。
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まとめ
空調管理システムは、建物の室内環境を最適に保つための重要な設備であり、温度・湿度・換気・気流の4つの機能を統合的に管理します。
これにより、単なる快適性の向上だけでなく、健康維持、生産性向上、省エネ効果の実現など、多方面にわたって重要な役割を果たしています。
導入を検討する際には、目的と空調方式について理解したうえで、自社に適切なものを選定することが重要です。また、システムの性能を長期的に維持するためには、定期的なメンテナンスと法的基準の遵守が欠かせません。
空調管理の効率化や省エネを目指すためには、パナソニックの「Panasonic HVAC CLOUD」の導入が効果的です。
「Panasonic HVAC CLOUD」は複数の物件の空調を一括で遠隔管理でき、現地に出向くことなく各物件の空調を効率的に運用できます。また、冷媒漏えい診断サービスにより簡易点検を自動化できるため、点検を忘れたことによる罰則のリスクを減らすことができます。
これらにより、管理工数の大幅な削減と空調の消費電力量の削減が実現します。ぜひお気軽にお問い合わせください。
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