気候変動への対応が世界的な課題となっている近年、日本でもGX(グリーントランスフォーメーション)への注目が高まっています。GXは、単なる環境対策にとどまらず、エネルギーの安定供給や経済成長も同時に実現しようとする包括的な取り組みです。
本記事では、GXの基本的な意味から企業が取り組むメリット、国の支援制度、具体的な実践方法まで、幅広く解説していきます。
GX(グリーントランスフォーメーション)とは
GXとは「Green Transformation:グリーントランスフォーメーション」の略称で、これまで化石燃料を中心に動いてきた経済・社会・産業構造を、太陽光や風力などのクリーンエネルギーを基盤とする世の中へと変革することを指します。
具体的には「カーボンニュートラル」「エネルギーの安定供給」「経済成長」という3つの目標を同時に実現し、経済社会システム全体を変革していく取り組みです。地球環境を守りながらも国民生活や経済活動の維持、さらには産業競争力の強化までを視野に入れて、総合的な社会変革を目指します。
なお、GXは、DX(デジタルトランスフォーメーション)に続いて経済産業省が提唱した概念です。
1.「カーボンニュートラル」の実現
GXの中心的な目的は、温室効果ガスの排出削減によって地球温暖化を防ぐことです。温室効果ガスは、本来であれば地球を適切な温度に保ち、生命が生存できる環境を維持するために欠かせない存在です。
しかし、産業革命以来、エネルギーを得るために石油や石炭といった化石燃料を大量に燃焼させてきた結果、大気中の温室効果ガス濃度は産業革命前と比べて約40%(※)も増加し、地球の平均気温は上昇しています。これにより異常気象の頻発、海面上昇による水害、水産資源や農作物への打撃、さらには熱中症や感染症の拡大など、私たちの暮らしや健康に深刻な影響がもたらされました。
こうした状況を受け、日本を含む世界各国・地域は「2050年までのカーボンニュートラル実現」を国際公約として合意しました。カーボンニュートラルとは、温室効果ガスの削減量と吸収量によって排出量を差し引きゼロにすることを意味します。また、その中間目標として日本では2030年度までに2013年度比で46%の削減を掲げています。
この公約を守り地球環境を次の世代へ引き継ぐためにも、従来のエネルギー利用の在り方を根本から見直す必要があるのです。
※地球温暖化の現状と原因、環境への影響|COOL CHOICE 未来のために、いま選ぼう。
2.「エネルギーの安定供給」の実現
日本のエネルギー自給率は2022年度でわずか13.3%と、OECD諸国38ヵ国のうち37番目という極めて低い水準にあります(※)。
エネルギー資源を海外に過度に依存している状況は、国際情勢の変化に影響を受けやすいというリスクを抱えています。実際、ウクライナ情勢によって燃料の調達が難しくなり、電力需給のひっ迫や燃料価格の高騰が生じました。
こうした事態を受け、日本はエネルギー供給の在り方の見直しを迫られています。国際情勢に左右されにくい強固なエネルギー構造を構築しなくてはなりません。
太陽光や風力、地熱などの再生可能エネルギーの導入拡大を図るとともに、エネルギー利用の効率化によって化石燃料への過度な依存からの脱却をめざしています。
(※)日本のエネルギー|経済産業省 資源エネルギー庁
3.「経済成長」の実現
GXのもう一つの柱が「経済成長」の実現です。
これまで温室効果ガスの排出量は経済活動の拡大と比例するものと考えられ、どちらか一方を優先すればもう一方は犠牲になるとされてきました。
しかし、日本はエネルギー資源に乏しい国であることから、限られた資源を有効活用するための技術に関する研究開発が従来から盛んに行われてきた歴史があります。
その技術を活用することで、カーボンニュートラルの実現やエネルギーの安定供給をめざすとともに、日本の産業競争力の強化を図ろうとしているのです。
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カーボンニュートラルが国際的な潮流となる今、日本はこの変化をリスクではなく新たな成長機会と捉え、世界をリードする経済構造への転換をめざしています。
企業がGX(グリーントランスフォーメーション)に取り組むメリット
GXは国家レベルの取り組みであると同時に、企業にとっても多くのメリットをもたらす機会となります。具体的には以下のとおりです。
- 企業価値の向上が期待できる
- コストの削減につながる
- ビジネスチャンスを創出できる可能性がある
- 資金調達を有利に進められる
各メリットについて詳しく見ていきましょう。
企業価値の向上が期待できる
地球環境問題は、今や世界共通の課題として広く認識されています。
そうしたなかで、企業が環境問題に積極的に取り組む姿勢を示すことは、社会的信頼の獲得やブランド価値の向上につながります。
消費者や取引先からの評価が高まるだけでなく、環境意識の高い優秀な人材の獲得も期待できるでしょう。
コストの削減につながる
GXでは温室効果ガスの排出削減とエネルギーの安定供給を実現させるために、エネルギー消費量の削減に取り組みます。これはすなわち、エネルギーコストの削減に直結する取り組みです。
省エネ設備や再生可能エネルギーの導入には初期投資が必要となりますが、長期的に見れば光熱費の大幅なコスト削減を実現できます。
ビジネスチャンスを創出できる可能性がある
GXへの取り組みは、企業にとって新たなビジネスチャンスを生み出す可能性を秘めています。
例えば、自社の活動を積極的に発信することで、同じ目的をもつ企業との協業や新たな取引機会が生まれることがあります。
また、GXを通じて得た知見や技術を活用し、環境関連サービスやエコ製品の開発、コンサルティングといった新規事業に展開することも可能です。
さらにGXに取り組んだ商品やサービスであれば、環境政策を先導してきた欧州などの環境基準の厳しい海外市場への輸出にも対応できるようになるでしょう。
資金調達を有利に進められる
近年では財務情報だけでなく非財務情報も考慮するESG投資がトレンドとなりつつあるため、GXに向けた取り組みは資金調達の面でも有利に働きます。
ESG投資とは「Environment(環境)」「Social(社会)」「Governance(ガバナンス)」を評価して投資を判断する方法です。
ESG投資が注目されている背景には、環境問題や労働問題、人権問題といった社会的責任を十分に果たしていない企業は消費者からの信頼を損ね、経営上のリスクにつながるという考えがあります。
さらに環境関連の補助金制度を活用すれば、これまで予算の制約で実施が難しかった大規模な設備投資や新規事業も実行しやすくなるでしょう。
国が取り組むGX(グリーントランスフォーメーション)
国はGXを実行するために、さまざまな取り組みを進めています。
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国の取り組み |
詳細 |
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「GX実行会議」の設置 |
内閣総理大臣を議長としてGX実現に向けた議論を行う場 |
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「脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律」の施行 |
GX実現に向けた法律 |
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「GXリーグ」の開始 |
企業が自主的に参画し、官・学と共にGX実現に向けた挑戦を協働で行う場 |
なかでも、「GX推進法(脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律)」によって打ち出された「成長志向型カーボンプライシング構想」は企業への影響も大きい施策です。この構想は、GXの実現に向けて150兆円を超える官民投資を促すために、企業が積極的にGX関連の投資を進められるよう、政府が支援や制度的な後押しを行うものです。
具体的には、以下3つが開始または今後開始されます。
- 政府による20兆円規模の支援
- カーボンプライシングの導入
- 新たな金融手法の活用
それぞれ、企業にどのような影響があるのか見ていきましょう。
政府による20兆円規模の支援
国は、「2050年のカーボンニュートラル実現」という国際公約およびGXを達成するためには、2023年度から10年間で150兆円を超える官民投資が必要としています。
しかし、企業にとってGXの取り組みは初期投資の負担が大きいのが実情です。
そこで、民間事業者の予見可能性を高めて積極的な投資を促すため、政府はGX経済移行債を活用し、前倒しで20兆円規模の支援を行うことを決定しました。
支援規模は10年間で20兆円とされ、すでに補助金制度の実施などを通じてGXの取り組みが支援されています。
カーボンプライシングの導入
カーボンプライシングは、GX実現に向けた規制的措置として導入が予定されています。具体的には以下が挙げられます。
- 化石燃料賦課金
化石燃料の輸入事業者等に対してCO₂排出量に応じた金額を徴収します。 2028年度から導入されます。 - 有償オークション
発電事業者に対してCO₂排出量に応じた金額をオークションにより徴収します。 2033年度から開始予定です。 - 排出量取引制度
企業間で温室効果ガスの排出量を売買する本制度は、2026年度から本格稼働となります。
定めた基準に基づき政府が各企業に排出枠を割り当て、目標を達成した企業は余った排出枠を売却でき、目標に届かない企業は超過分の排出枠を購入します。
これらで得た収入は20兆円規模のGX経済移行債の償還財源となり、排出に伴う金銭的負担を設けることでGXへの投資効果を高める目的もあります。
なお、制度開始後に直ちに規制されるわけではなく、企業がGXに取り組む期間を設けたうえで段階的に引き上げられる仕組みとなっています。早期にGXに取り組むほど負担が軽くなるのが特徴です。
新たな金融手法の活用
GXの実現に向けた取り組みが停滞しないよう、新たな金融手法も活用されています。
GX推進機構は、GXに取り組む企業に対して債務保証や出資を行うことで、民間金融機関だけではカバーしきれないリスクを補完し、必要な資金を確保しやすくしています。この仕組みにより、中小企業も含めた幅広い企業がGXへの投資に踏み出しやすい環境が整備されているのです。
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企業ができるGX(グリーントランスフォーメーション)
企業ができるGXにはさまざまなものがあります。
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GXの取り組み事例 |
詳細 |
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電気の使い方を見直す |
使用していない照明を消すなど、日々できることから排出量を削減 |
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省エネ機器・設備への更新 |
LED照明や高効率空調設備といった省エネルギー機器・設備に取り替えることで排出量を削減 |
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建物の断熱化 |
壁や窓の断熱性能を高めて冷暖房効率を上げ、空調の必要性を下げることで排出量を削減 |
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再生可能エネルギーの導入 |
太陽光発電システムなどを利用して化石燃料への依存を減らす |
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移動や出張の削減・手段の改善 |
テレワークやオンライン会議の活用、公共交通機関の利用により、移動に伴う排出量を削減 |
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廃棄量の削減 |
ペーパーレス化、製造工程の見直し、リサイクルなどを通じて廃棄量を減らし、廃棄に伴う排出量を削減 |
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製品の素材の見直し、軽量化 |
自然由来の素材への切り替え、使用する素材を減らすことで製造段階の排出量を削減するとともに、軽量化は輸送時の排出量も減らせる |
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システムの導入 |
エネルギー量を可視化・制御できるシステムを導入し、データに基づいた改善を行うことで排出量を削減 |
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カーボン・オフセットの利用 |
削減努力をしたうえで、どうしても削減できない部分を別の者が行うプロジェクトに出資して埋め合わせる |
削減目標や予算に応じて、実行可能な取り組みから着手しましょう。規模の大きな取り組みは、補助金制度の活用可否も含めて検討すると実現しやすくなります。
パナソニックのGX(グリーントランスフォーメーション)に関する取り組み
パナソニックは、GX実現に向けて独自の長期ビジョンを掲げ、積極的な取り組みを進めています。
自社のCO₂排出量削減はもちろん、製品やサービスを通じた社会全体への貢献も視野に入れた包括的なアプローチが特徴です。
ここでは、GX実現に向けたパナソニックの取り組みと、企業さまの取り組みに貢献するシステムについてご紹介します。
2050年の目標「3億トン削減」に向けて
パナソニックでは、原材料の調達から製品の使用に至るまでのバリューチェーン全体で、年間約1.1億トンのCO₂を排出しています(※1)。
この問題に向き合うため、2050年までに3億トンのCO₂削減を目指す長期ビジョン「Panasonic GREEN IMPACT(PGI)」を発信しました。
現状排出している1.1億トンの削減だけでなく、社会への貢献や変革によって削減に貢献する取り組みを合わせて、世界のCO₂排出量の約1%にあたる3億トン以上の削減インパクト(※2)の創出を目標としています。
<Panasonic GREEN IMPACT(PGI)による4つの取り組み>
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OWN IMPACT |
すべての工場でCO₂排出量実質ゼロをめざすとともに、省エネ家電の追求によって自社のバリューチェーン全体の排出量1.1億トンの削減をめざす |
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CONTRIBUTION IMPACT |
環境問題に配慮した製品やサービス(既存事業)を通じて1億トンの削減をめざす |
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FUTURE IMPACT |
ガラス一体型の太陽電池といった先進の環境技術を用いた製品の普及や、新事業を創出することで、1億トンの削減をめざす |
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+INFLUENCE |
上記3つの取り組みや、国際的イベントでの活動、企業市民活動を通じて、一人ひとりの環境意識の変化を促し、社会全体の排出量削減に貢献する |
※1. CO2排出量は2020年度実績の数値
※2. 2020年 エネルギー起源CO2排出量 317億トン(出典:IEA)
GXに貢献する「Panasonic HVAC CLOUD」
「Panasonic HVAC CLOUD」は、空調の使用に伴う電力消費量を減らすことにより、GXにおける温室効果ガスの排出削減・エネルギーの安定供給に貢献するシステムです。
建物の中でも空調は、エネルギー消費量の割合が最も高い設備として知られています。したがって、空調を優先的に改善することが効率的なGX推進につながるのです。
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具体的に「Panasonic HVAC CLOUD」は、以下のような機能でGXに貢献します。
- AIが設定温度を自動で最適化
「物件」「気象」「時刻」「リモコン操作」などの情報をAIが学習し、外気温や時刻の変化に応じて設定温度を自動調整する機能です。
人による過度な温度設定の上げ下げを防ぐことで、約20%の空調消費電力量のカットを検証済みとなっています(※)。
その空間で行われている温度調整の傾向をAIが学習するため、ただ温度を制限するのではなく、快適性を損なわずに省エネ運転を実現します。 - 複数・多拠点にある空調の一括管理
任意のPCから複数・多拠点にある空調を一括管理できる機能です。
この機能により、GX実現に向けた取り組みを効率的に進められます。 - 空調電力推移の可視化
物件ごとに月別や時間帯別の空調消費電力量がグラフ表示される機能で、データに基づいた的確な対策を講じることが可能です。 - 異常の自動検知および通知
空調の異常を自動で検知し、管理者へ通知する機能です。
異常に素早く対応できるようになることで、エネルギーロスを防ぎます。
また、GX実現に向けた取り組みは費用が懸念点となりますが、「Panasonic HVAC CLOUD」の料金体系はご継続しやすい価格設定となっています。ご利用にあたっては、事前に導入効果の試算や、必要に応じて現地調査も実施いたしますので、安心して導入をご検討いただけます。
パナソニックは、本システムをはじめとした多様なソリューションを通じて、企業様のGX推進を力強くサポートしていますので、ぜひお気軽にご相談ください。
※1年間、関東地方の2つの異なる物販店舗(約1,000㎡)の施設で検証。「設定温度自動リターン」機能(一定時間で指定した温度設定に戻る機能)との比較。
まとめ
GX(グリーントランスフォーメーション)は、化石燃料中心の経済・社会構造をクリーンエネルギー基盤へと変革する取り組みです。「カーボンニュートラル」「エネルギーの安定供給」「経済成長」の3つを同時に実現することで、地球環境を守りながら産業競争力を強化していくことが目的となっています。
企業にとってGXへの取り組みは、企業価値の向上やコスト削減、ビジネスチャンスの創出、資金調達の優位性など多くのメリットをもたらします。国も20兆円規模の支援やカーボンプライシングの導入など、さまざまな施策でGXを後押ししており、早期に取り組むほど有利な仕組みが整えられています。
具体的な取り組みとしては、電気の使い方の見直しから省エネ設備への更新、再生可能エネルギーの導入、システムによるエネルギー管理など、自社の状況に応じた選択肢があります。
空調は建物のエネルギー消費において最も大きな割合を占めるため、「Panasonic HVAC CLOUD」のような空調管理システムの導入は、効率的なGX推進の第一歩として有効です。
GXへの取り組みをお考えの企業様は、ぜひお気軽にご相談ください。