6月 30, 2025
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ピークカットとは?メリット・方法・ピークシフトの違い

電力使用量が集中する時間帯の電力使用量を抑える「ピークカット」は、電気料金削減の有効な手段です。
建物の用途や規模の大きさによっては年間で何千万円もの電気料金となるため、高圧受電を利用する事業者にとって、ピークカットの削減効果は非常に大きくなります。
この記事では、ピークカットの意味やメリット、具体的な方法について詳しく解説します。また、ピークシフトとの違いについても、あわせて見ていきましょう。

 

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ピークカットの意味とメリット

ピークカットとは、電力使用量がピークとなる時間帯の電力使用を抑える(カットする)取り組みのことを指します。



ピークカットとは_02

ピークカットは、電気料金の削減はもちろん、CO2削減にもつながるため、カーボンニュートラルに向けた取り組みとしてもアピールできます。

ピークカットが電気料金の削減につながる理由

高圧受電の電気料金は、一般的に「基本料金×電力量料金×再エネ賦課金」で構成されています。このうち、基本料金と電力量料金は、ピークカットによって削減が可能です。その理由について、以下で解説します。

【理由1】電力使用量そのものが減るため

ピークカットは電力使用量そのものを減らす取り組みです。

電気料金を構成する「電力量料金」は、実際に使用した電力量に応じて算出されます。ピークカットによって電力の購入量が減るため、電気料金の削減につながるのです。

 

【理由2】基本料金に影響する最大デマンド値の上昇を防ぐため

基本料金とは、電力を使用しなくても毎月固定で発生する費用であり、「基本料金単価 × 契約電力 × 力率割引・割増」によって算出されます。

高圧小口電力契約(50~500kW未満)の事業者の場合、この計算で用いられる「契約電力」は、1ヶ月間のうち最も大きい30分間の平均電力、すなわち最大デマンド値によって決定します。この決定方式を定量制といい、一度でも最大デマンド値が上昇してしまうと、以降1年間の基本料金に反映されてしまうのです。

たとえ翌月以降に節電をしても、最大値を記録したあとの1年間は基本料金が下がることはありません。

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高圧大口契約(500~2,000kW)と特別高圧契約(2,000kW)の場合は、電力会社との協議によって契約電力が決定する協議制が用いられます。協議では、直近12カ月の最大デマンド値や負荷設備の容量などを考慮するため、最大デマンド値が上昇した場合には、契約超過金を支払う必要があるのです。そして再度協議が行われ、契約電力が変更されることもあります。

つまり、高圧受電では小口・大口・特別の契約種別に関係なく、電力使用量がピークとなる時間帯の使用電力を抑えて最大デマンド値の上昇を防ぐことで、長期的な電気代削減につながるのです。

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ピークカットによる基本料金の削減効果

ピークカットによる1年間あたりの削減効果はどれくらいあるのでしょうか。基本料金を例に、以下の条件で試算してみましょう。

<試算条件>


  • 定量制:高圧小口電力契約(50~500kW未満) 
  • 東京電力の2025年度の基本料金(1,989円00銭)
    ※2024年4月1日以降新規加入者の料金
  • 力率割引0.85%
    ※力率とは電力会社から需要家へ届けられた電力のうち、実際に使われた電力の割合のこと。電力の有効的な利用のために力率に応じた割増・割引が設定されている。東京電力では力率の標準を85%とし、1%下回った場合は基本料金を1%割増・1%上回った場合は基本料金から1%割引としている。

 


基本料金=[基本料金単価]×[契約電力]×[力率割引・割増]

 

■最大デマンド値が100kWの場合
≫[1,989円×100kW]×0.85%×12カ月=2,028,780円

■最大デマンド値が150kWの場合
≫[1,989円×150kW]×0.85%×12カ月=3,043,170円

この試算では、ピークカットによって最大デマンド値を50kW抑えたことで、年間で約100万円もの基本料金の削減ができました。電力使用量の大きい建物や業種であるほど、ピークカットの削減効果は大きなものになります。

※出典:高圧電力A(契約電力500kW未満)|電気料金プラン 高圧・特別高圧|東京電力エナジーパートナー株式会社
※出典:Ⅲ 契約種別および料金|東京電力エナジーパートナー株式会社


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ピークカットの方法

ピークカットを実現するためには、さまざまな方法があります。ここでは主な方法として、「太陽光発電システム・蓄電池」と「デマンドコントロールシステム」を紹介します。

 

太陽光発電システム・蓄電池

 電力需要がピークとなる時間帯に、太陽光発電システムで発電した電力を自家消費することで、電力会社から購入する電力量を減らし、ピークカットを図ることができます。

また、太陽光発電システムと蓄電池を併用することで、日射のない時間帯でも電力の供給が可能になり、より柔軟な電力管理が可能になります。例えば、早朝や夜間に電力需要がピークとなる業種や、悪天候時の最大デマンド値の上昇抑制に効果を発揮します。

 

デマンドコントロールシステム

 デマンドコントロールシステムとは、最大デマンドの上昇を防ぐために自動で監視・制御するシステムです。あらかじめ設定した目標デマンド値を超えないよう、電力使用量が増加傾向にある際には管理者に通知し、同時に空調設備や照明などの設備を自動的に制御します。

節電は「エアコンの温度を調整する」「使っていない部屋の照明は切る」といった手動による対応も可能ですが、手間がかかるうえ、具体的な効果の把握は難しいでしょう。デマンドコントロールシステムを活用すれば、データに基づいて自動制御してくれるため、管理者の負担を軽減しつつ、安定したピークカットを実現します。リアルタイムでのデータ閲覧も可能です。

 

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ピークカットとピークシフトとの違い

 ピークシフトとは、電力使用量がピークとなる時間帯から、少ない時間帯に電力使用をシフトさせることで1日の電力使用量を平準化させる方法を指します。ピークカットとの違いは、電力使用量の変動があるかどうかです。

ピークカットは電力会社が供給する電力の使用量そのものを減らす手法ですが、ピークシフトは電力を使用するタイミングを移動することで最大デマンド値の上昇を防ぎます。つまり、ピークシフトは電力使用量そのものは変わらないのです。

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ピークシフトの具体的な方法としては「設備の稼働時間をずらす」「電力使用量の少ない時間帯に蓄電池を充電・ピーク時に放電する」などがあります。

 

まとめ

 ピークカットは、電力使用量がピークとなる時間帯の電力使用を抑えることで、電気料金の削減をめざす取り組みです。電力使用量に応じて決まる電力量料金を削減できるだけでなく、最大デマンド値で決まる基本料金の上昇を防ぐこともできます。

とくに、基本料金は一度でも最大デマンド値が上昇してしまうと、その最大デマンド値を基準に算出された基本料金が以降1年間適用されてしまいます。建物の規模や業種によっては、基本料金の上昇は大きな負担になるため、ピークカットの重要性が一層高まります。

安定したピークカットを図るのであれば、デマンドコントロールシステムが有効です。事前に設定した目標デマンド値を超えないように自動的に電力使用を制御するため、天候に左右されやすい太陽光発電とは異なり安定性が高く、手動による節電のようなヒューマンエラーのリスクも回避できます。また手動による節電とは異なり、管理の手間を減らすこともできるため、効率的で確実なピークカットが実現できます。

パナソニックでは、建物の規模やお客様のご要望に応じた最適なシステム選びをご提案します。電力コストの見直しや管理の効率化をご検討中の方は、トータルでのご支援が可能ですのでぜひお気軽にご相談ください。

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