10月 15, 2025
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代替フロンとは?特定フロンとの違いもわかりやすく解説

代替フロンは特定フロンの代わりとして開発されたフロンガスですが、環境への影響がゼロというわけではありません。企業が適切な環境対策を実施するためには、代替フロンの性質と現在の規制動向を正しく理解することが重要です。

本記事では、代替フロンの基本知識から法規制への対応まで、わかりやすく解説します。

 

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代替フロンとは?

代替フロンについて理解するためには、まず特定フロンとの違いを明確にする必要があります。「代替フロン」とは、オゾン層を破壊しないフロンのことを指し、一方、オゾン層を破壊するフロンのことを「特定フロン」といいます。

代替フロン

  • HFC
    (Hydro Fluoro Carbon:ハイドロフルオロカーボン)

特定フロン

  • CFC
    Chloro Fluoro Carbon:クロロフルオロカーボン)

  • HCFC
    Hydro Chloro Fluoro Carbon:ハイドロクロロフルオロカーボン)

オゾン層を破壊する特定のフロン「CFC」「HCFC」に代わって、その影響がないフロンとして転換が進められたのが代替フロン「HFC」です。

 

特定フロンから代替フロンへ転換した背景

特定フロンから代替フロンへ転換したのは、オゾン層の破壊効果が国際的に問題視されたことが背景にあります。

フロンは、フッ素と炭素を含む化合物で、「無色」「無臭」「不燃性」「無毒性」「化学的に安定」といった特徴を持っています。そのため、冷蔵庫やエアコンの冷媒、断熱材、スプレー製品など幅広い用途で使用されてきました。

しかし、1970年代にフロンガスがオゾン層を破壊することが米国にて指摘され、地球規模の問題であることから、国際的な議論に発展しました。1985年には、オゾン層の保護のための条約である「ウィーン条約」が採択され、さらに1987年には具体的な規制内容を盛り込んだ「モントリオール議定書」が発効されます。

これを機に、日本を含む各国が特定フロンの生産と使用の段階的な廃止に取り組むようになりました。規制の流れは、以下のように進んでいます。

  • CFC(クロロフルオロカーボン):
    特定フロンの一種で最もオゾン層破壊が大きく、先進国では1996年、発展途上国では2010年までに生産全廃となった
  • HCFC(ハイドロクロロフルオロカーボン):
    特定フロンの一種でCFCよりは影響が少ないが、引き続き問題視され、先進国では2020年には実質全廃。発展途上国も2030年までの全廃が進められている
  • HFC(ハイドロフルオロカーボン):
    代替フロン。オゾン層には影響がないが、温室効果があるため新たな規制対象になっている
現在では、オゾン層に影響を与えないHFCが主に使われていますが、温暖化対策の一環として、その使用量削減も求められています。

 

代替フロン=環境にやさしい は間違い

代替フロンは、「代替」とあることから、特定フロンの代わりとして環境に配慮した物質だと思われる方も多いかもしれません。

たしかに、代替フロンはオゾン層を保護するという観点では効果はありますが、地球温暖化には大きな影響を及ぼすとされています。

 

 

特定フロン

代替フロン

オゾン層破壊効果

あり

なし

温室効果

あり

あり

 

代替フロンのHFCは、地球温暖化の原因とされる「温室効果ガス」の一種です。温室効果ガスとは、太陽の熱を地表付近の大気中に閉じ込める性質をもつガスの総称で、本来は地球の適温を保つうえで欠かせない存在です。

もし温室効果ガスが一切なければ、地球の平均気温は氷点下19℃になるといわれており、私たちの生活は成り立ちません。

しかし、温室効果ガスが過剰に増えると、大気中に熱がたまりやすくなり、地球全体の気温が上昇します。この現象が「地球温暖化」であり、今や深刻な環境問題のひとつとして世界中で問題視されています。

日本における温室効果ガス排出量の割合(※)の約9割を占めているのは二酸化炭素(CO2)で、フロンガスにおいては約4%です。一見すると影響は少ないように思えますが、フロンガスは二酸化炭素の数百倍から1万倍以上の温室効果をもつとされており、少量の排出でも温暖化への影響は極めて大きくなります。

すなわち、「代替フロン=環境にやさしい」というわけではありません。


フロンガス 代替_03

画像引用:地球環境とフロン|環境省

※出典元:日本の温室効果ガス排出量(2022年度)|資源エネルギー庁

 

今は代替フロンも規制削減に

これまでフロンガスの規制は、主に特定フロンを対象としてきました。しかし現在では、代替フロンについても、地球温暖化の観点から削減の対象となっています。

国際的な温暖化対策として、1997年に採択された「京都議定書」では、締結した先進国が、2008年から2012年の5年間で法的拘束力のある数値目標を各国ごとに設定しました。
日本は2008年から2012年の5年間で6%の削減目標を掲げ、実際に目標を達成しています。

また、1987年に発効された「モントリオール議定書」は特定フロンの規制が目的でしたが、2016年10月の改正により、代替フロンも新たに規制対象に追加されました。これにより、フロンを使わない技術や製品の開発が進んでいます。

※出典元:京都議定書第一約束期間の削減目標達成の正式な決定について(お知らせ)|環境省

 

代替フロンの影響をふまえて意識すべきこと

代替フロンが地球温暖化に与える影響を理解した上で、企業が取り組むべき対策について見ていきましょう。法令遵守と環境保護の両面から、適切な管理手法を選択することが重要です。


フロンに関する法令を遵守する

フロン類(CFC・HCFC・HFC)を使用する機器については、製造から廃棄に至るまで法令に基づいた包括的な管理が義務付けられています。

フロン類を使用した機器の種類

該当の法律

冷媒用途として製造・販売された業務用冷凍・冷蔵・空調機器

フロン排出抑制法

冷媒用途として製造・販売された家庭用の冷蔵庫・冷凍庫・エアコン・洗濯乾燥機(ヒートポンプ式)

家電リサイクル法

冷媒用途として製造・販売された自動車のエアコン

自動車リサイクル法

そのため、フロンの適正管理は、環境保護にとどまらず、法令遵守という企業責任の観点からも重要です。フロンを使用する機器では、フロンの大気放出を防ぐために、定期的な点検の実施や適切な廃棄処理を行うことが欠かせません。

例えば、空調機器の故障が原因で冷媒として充てんされたフロンが漏れるケースがありますが、定期点検を行うことでリスクを軽減し、異常を早期に発見して迅速に対応することが可能です。

 

 

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ノンフロン製品を選ぶ

フロンを使用していない「ノンフロン製品」を選ぶことも、地球環境への配慮です。

フロンガス 代替_02

引用:いま、私たちにできること。|環境省

パナソニックでも自然冷媒を使用した製品の開発・製造・販売を進めており、国内で生産する家庭用の冷蔵庫・冷凍庫に至っては、2004年にすべてノンフロン化を完了しました。ショーケースや冷凍機システムなど、業務用のノンフロン製品もラインナップしています。

 

まとめ

代替フロンは、オゾン層を破壊する特定フロンの代わりとして開発されたフロンガスですが、地球温暖化には大きな影響を及ぼすため、現在では削減対象となっています。CFCからHCFC、そしてHFCへと段階的に転換されてきたものの、本質的な解決には自然冷媒やノンフロン技術の導入が不可欠です。

企業には、フロン排出抑制法をはじめとした関連法規の遵守が求められており、定期点検や適切な廃棄管理が重要な責務となっています。しかし、従来の手作業による管理は煩雑で、人手や時間の負担が大きいのが実情です。

 

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