「フロン排出抑制法」は、フロン類を適切に管理し、地球環境を保護するための法律です。
本記事では、フロン排出抑制法の概要や目的、対象機器について解説するとともに、法改正の経緯や機器管理者に対する義務などについて、詳しく解説します。
\「簡易点検」の代替にできる機能も使える/
フロン排出抑制法とは
引用:地球環境とフロン|環境省
フロン排出抑制法とは、フロン類を使用した製品の、製造から廃棄までのライフサイクルを通じた管理について定めた法律です。正式名称は「フロン類の使用の合理化及び管理の適正化に関する法律」といいます。
ここでは、フロン排出抑制法の目的と、対象機器について詳しく説明します。
目的
フロン排出抑制法は、フロン類が引き起こす「オゾン層の破壊」および「地球温暖化への影響」を防止し、地球環境の保全を図ることを目的としています。
フッ素と炭素の化合物(フルオロカーボン)の総称であるフロン類は、科学的に扱いやすい物質であり、人体への毒性が小さいことから、エアコンや冷蔵庫、冷凍庫など、さまざまな用途に活用されてきました。
しかし、フロン類はオゾン層を破壊し、地球温暖化への深刻な影響があることが明らかとなったのです。そのため、フロン類が大気中へ排出することを抑制する法律が整備されました。
引用:地球環境とフロン|環境省
対象機器
フロン排出抑制法は、第一種特定製品が対象です。具体的には、フロン類を冷媒として使用し、業務用として製造・販売された「冷凍・冷蔵機器」「空調機器」が該当します。
■設置が想定される場所別に示した「第一種特定製品」の例
設置場所 |
機器種類の例 |
|
スーパー、百貨店、 コンビニエンスストア |
全 体 |
パッケージエアコン(ビル用マルチエアコン) ターボ冷凍機、スクリュー冷凍機 チラー、自動販売機 冷水機(プレッシャー型)、製氷機 |
食品売り場 |
ショーケース 酒類・飲料用ショーケース 業務用冷凍冷蔵庫 |
|
バックヤード |
プレハブ冷蔵庫(冷凍冷蔵ユニット) |
|
生花売り場 |
フラワーショーケース |
|
公共施設 |
オフィスビル |
パッケージエアコン(ビル用マルチエアコン) ターボ冷凍機、スクリュー冷凍機 チラー、自動販売機 冷水機(プレッシャー型)、製氷機、給茶機 |
各種ホール |
||
役所 |
||
レストラン、飲食店、 各種小売店 |
魚屋、肉屋、 果物屋、食料品、 薬局、花屋 |
店舗用パッケージエアコン 自動販売機 業務用冷凍冷蔵庫 酒類・飲料用ショーケース すしネタケース 活魚水槽 製氷機、卓上型冷水機 アイスクリーマー ビールサーバー |
工場、倉庫等 |
工場、倉庫 |
設備用パッケージエアコン ターボ冷凍機、スクリュー冷凍機 チラー、スポットクーラー クリーンルーム用パッケージエアコン 業務用除湿機 研究用特殊機器(恒温恒湿器、冷熱衝撃装置など) ビニールハウス(ハウス用空調機(GHP を含む)) |
学校等 |
学校、病院 |
パッケージエアコン(GHP 含む) チラー 業務用冷凍冷蔵庫 自動販売機 冷水機 製氷機 病院用特殊機器(検査器、血液保存庫など) |
運輸機械 |
鉄道 |
鉄道車両用空調機 地下鉄車両用空調機 地下鉄構内(空調機器(ターボ冷凍機など)) |
船舶 |
船舶用エアコン、鮮魚冷凍庫(スクリュー冷凍機など) |
|
航空機 |
航空機用空調機 |
|
自動車 |
冷凍車の貨物室、大型特殊自動車、小型特殊自動車、 被牽引車 |
引用:第一種特定製品の管理者に関する運用の手引き(第3版)|環境省 経済産業省
なお、家庭用の空調機器、冷蔵庫、衣類乾燥機は「家電リサイクル法」にて、自動車のカーエアコンは「自動車リサイクル法」で、それぞれフロン類の管理について定められています。
\「簡易点検」の代替にできる機能も使える/
フロン排出抑制法の改正について
フロン排出抑制法の歩みは、2001年に制定された「特定製品に係るフロン類の回収及び破壊の実施の確保等に関する法律(通称:フロン回収・破壊法)」から始まります。制定当初は、フロン類を使用した対象製品に対して、整備時・廃棄時のフロン類の回収ならびに回収した機器の破壊等を義務付けていました。
その後、2006年に行政による管理制度の導入、機器整備時のフロン回収の義務化などを追加する法改正が行われました。
2013年には、機器使用時の想定を超えるフロン類の漏えいが課題となり、これまで義務付けられていた回収・破壊だけでなく、フロンの製造から廃棄までのライフサイクルを通じた包括的な対策が加えられています(2025年4月1日施行)。この改正に合わせて名称も改められ、現在の「フロン類の使用の合理化及び管理の適正化に関する法律(フロン排出抑制法)」に変更されました。
さらに2019年6月には、10年以上にわたり廃棄時のフロン回収率が4割弱で低迷していた実態を受け、回収率向上のために直接罰の導入などの改正を行いました(2020年4月1日施行)。
フロン排出抑制法における機器管理者に対する規制
フロン排出抑制法では、フロン類を使用する機器を製造・販売・廃棄する者だけでなく、その機器を所有する管理者に対しても「機器の使用」と「機器の廃棄」に関する義務を定めています。
ここでは、現行のフロン排出抑制法における、機器管理者に対する規制について詳しく説明します。
管理者の定義
フロン排出抑制法における管理者とは、原則として第一種特定製品の所有者を指します。法人が所有している場合は代表取締役社長などではなく、法人が所有者となります。
そのほか、ケースごとに管理者の定義について以下にまとめました。
ケース |
管理者 |
機器をリース・レンタルしている場合 |
契約により、保守・修繕の責務が所有者以外にある場合には、リース・レンタル会社が管理者となる |
テナントスペースにある機器 |
テナント事業者が所有する機器であれば、テナント事業者が管理者となる |
機器を共同所有している場合 |
話し合い等で決定する |
機器の「使用」に関する義務
フロン排出抑制法の対象となる第一種特定製品を所有する管理者は、その機器の使用に関して下表に記載の事項を守らなければなりません。違反した場合は罰則を受ける場合があります。
適切な設置環境の確保 |
以下すべてに該当する場所へ設置を行うこと ・設置により機器が損傷等しない場所 ・点検・修理等を行うスペースが確保できる場所 また、その場所の維持・保全を実施すること |
簡易点検の実施 |
すべての第一種特定製品に対して、3ヶ月に1回行うこと |
定期点検の実施 |
一定規模以上(※)の第一種特定製品を1台以上所有している場合、専門業者による点検を1年または3年に1回以上行うこと ※圧縮機に用いられる電動機または内燃機関の定格出力が7.5kW以上の場合 |
点検の記録 |
点検の記録を廃棄後3年間保存すること |
フロン類が漏えいした際の対処 |
点検によってフロン類の漏えいが通知された場合は点検・修理を行うこと また修理が完了するまでがフロン類の充填は行わないこと |
フロン類の漏えい量の報告 |
フロン類の漏えいが一定以上の場合は国に報告すること |
なお、定期点検の実施で簡易点検を兼ねることも可能です。
機器の「廃棄」に関する義務
フロン排出抑制法の対象となる第一種特定製品を所有する管理者は、その機器の廃棄に関しても義務が課せられています。
フロン類の回収先 |
第一種フロン類充塡回収業者に依頼すること |
引取証明書の保存期間 |
第一種フロン類充塡回収業者から回付された引取証明書(原本)を3年間保存すること |
機器を引渡す際の必要書類 |
機器を廃棄物・リサイクル業者に引渡す際は、引取証明書の写しを機器と一緒に渡すこと |
解体時における書面の保存期間 |
元請業者から説明された書面を3年間保存すること |
廃棄についても、違反した場合は罰則の対象となる場合があります。例えばフロン類を回収しないまま機器を廃棄した場合、行政処分に加えて刑事罰(50万円以下の罰金)の対象となります。
\「簡易点検」の代替にできる機能も使える/
フロン排出抑制法に正しく対応するために
ここまで、フロン排出抑制法における管理者の義務について解説しましたが、実際には例外もあり非常に複雑です。
また、これまでに度重なる改正が行われており、カーボンニュートラルを目指す国の方針を踏まえると、今後もさらなる改正が行われる可能性は十分にあります。
法令を遵守するためには、フロン排出抑制法を正しく理解し、常に最新の情報に基づいて対応していくことが重要です。
不安がある場合は、設備業者などへの管理の委託も検討しましょう。
まとめ
フロン排出抑制法は、フロン類がオゾン層の破壊および地球温暖化へ影響を及ぼすことを踏まえ、製造から廃棄までの包括的な管理について定めた法律です。対象は、フロン類を冷媒として使用した業務用の冷蔵・冷凍機器、空調機器(第一種特定製品)となっています。
これらの機器を所有する管理者は、使用および廃棄について守るべき義務があります。違反した場合には罰則の対象となるため、正しい知識を持って対応しなければなりません。
確実に法令を遵守するためには、システムを用いた正確かつ効率的な管理がおすすめです。空調の省エネ対策に貢献する「Panasonic HVAC CLOUD」は、フロン排出抑制法に対応した機能も提供しています。
Panasonic HVAC CLOUDは、フロン排出抑制法で3か月に1回の実施が義務付けられている「簡易点検」の代替にできる「冷媒漏えい診断サービス」をオプション機能として利用可能です。
毎日自動で冷媒漏えいの有無を診断し、結果を記録。冷媒漏えい時には速やかに管理者に通知が行われるので、詳細な点検・修理などの対処を迅速に行うことができます。
また、「店舗A・店舗B・店舗C」のような複数拠点の空調機器を、自身のPCからWeb上で一括管理でき、遠隔での運転状況の確認やAIによる店舗ごとの運転制御が可能です。さらに、機器に不具合が発生した際には警報メールが通知されるため、現地に行って各物件の空調リモコンに表示されるエラーコードを確認する必要がありません。これにより、現場ごとの個別対応や点検業務の手間を大幅に削減しながら、省エネ・脱炭素化に向けた空調管理の効率化を実現します。
パナソニックはお客様のニーズに応じた最適なソリューションを提案いたします。具体的なシステムの機能など、お気軽にお問い合わせください。
\「簡易点検」の代替にできる機能も使える/