エネルギー価格の高騰や脱炭素化への対応が求められるなか、EMS(エネルギーマネジメントシステム)への注目が高まっています。
EMSを導入することで、建物や設備のエネルギー消費を見える化し、効率的な省エネ対策を実現できます。しかし、導入には一定の初期費用がかかるため、補助金制度を活用してコストを抑えることが重要です。
本記事では、EMSの導入に活用できる補助金制度と、その活用ポイントについて詳しく解説します。
EMS(エネルギーマネジメントシステム)の導入に活用できる補助金制度
EMSの導入を支援する補助金制度は複数存在し、なかでも代表的なものとしては以下が挙げられます。
- 省エネ・非化石転換補助金
- 業務用建築物の脱炭素改修加速化事業(脱炭素ビルリノベ事業)
- ZEB普及促進に向けた省エネルギー建築物支援事業
それぞれ対象設備や補助率、申請要件が異なるため、正しく理解したうえで、自社の状況に合ったものを選びましょう。
省エネ・非化石転換補助金
省エネ・非化石転換補助金は経済産業省が運営する補助金制度です。
導入する設備に応じた4つの事業区分を、2つの補助制度に振り分ける形で構成されています。工場や事業場全体の省エネ化から、特定設備の更新、EMSの導入まで、幅広いニーズに対応できる点が特長です。
令和7年度に引き続き令和8年度も実施されることが決まっており、基本的な枠組みは継続される見込みとなっています。
【4つの事業区分と補助額】
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①工場・事業場型 |
工場・事業場全体で省エネ化を推進するための設備等への更新を支援する事業
[補助率]中小企業2分の1/大企業3分の1 等 [上限額]15億円 等 |
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②電化・脱炭素燃転型 |
化石燃料から電気への転換、より低炭素な燃料への転換など、燃料転換を伴う設備等への更新を支援する事業
[補助率]2分の1 等 [上限額]3億円 等 |
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③設備単位型 |
対象設備への更新(条件によって新設も対象)を支援する事業
[補助率]3分の1 等 [上限額]1億円 等 ※GX要件に適合するメーカーが製造した設備は上限額等が引き上げられる。加えて、従来支援対象としていた省エネ基準を大幅に超える性能を持つ設備には、より高い補助率が適用されるとともに、これまで適用外であった新設も対象となる。 |
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④エネルギー需要最適化型 |
エネルギーマネジメントシステム(EMS)の導入を支援する事業
[補助率]中小企業2分の1/大企業3分の1 等 [上限額]1億円 等 |
※画像引用:令和7年度省エネ支援パッケージ|資源エネルギー庁 省エネルギー課
【制度の構成】
A. 省エネルギー投資促進・需要構造転換支援事業費補助金
〉対象の事業区分:①工場・事業場型/②電化・脱炭素燃転型/④エネルギー需要最適化型
B. 省エネルギー投資促進支援事業費補助金
〉対象の事業区分:③設備単位型/④エネルギー需要最適化型
このうち、EMSの導入に活用できるのは事業区分「④エネルギー需要最適化型」で、制度ではA・Bのどちらも対象となります。
ただし、令和7年度では、EMS単体の導入で利用できたのはA(省エネルギー投資促進・需要構造転換支援事業費補助金)のみでした。
そのため令和8年度も、EMSの導入とあわせて空調や冷凍冷蔵設備、プレス機械などの汎用的な設備更新(要件によっては新設も可)を行う場合は制度Bを、EMSだけ導入する場合や工場・事業場全体の設備更新・燃料転換まで行いたい場合には制度Aを選択する、という流れになる可能性があります。
令和8年度の詳細はまだ公表されていないため、令和7年度の概要も参考にしながら、EMSの導入を含めた制度の全体像を見ていきましょう。
令和7年度に実施された本制度の振り返り・令和8年度の変更点

引用:SII:一般社団法人 環境共創イニシアチブ|事業トップ(令和6年度補正予算 省エネルギー投資促進・需要構造転換支援事業)公開データ
令和7年度の概要は上記の資料のとおりですが、令和8年度も引き続き4つの事業区分で実施されることが決まっているため、基本的な内容は大きく変わらないと考えられます。
事業者の規模や導入する設備に応じて、最適な事業区分を選択することで、効率的に補助金を活用できる仕組みとなっています。
令和8年度からの変更点として発表されているのは、以下の3つです。
- 「①工場・事業場型」にサプライチェーン連携枠という新たな申請枠が設けられ、サプライチェーン上の4者以上で連携して申請することで補助を受けられるように
- 「③設備単位型」にGXⅢ類型という枠が設けられ、より高い省エネ効果を有する設備を導入する場合に補助率や限度額を引き上げると同時に、これまで対象ではなかった新設も対象に
- 「②電化・脱炭素燃転型」の補助対象設備に、水素対応設備等が追加
補助額や補助対象の幅が広がるこの機会に、EMSの導入とあわせて、省エネ施策を総合的に進めてみるのもおすすめです。
EMSの導入について
令和7年度では、本制度を活用してEMSを導入する際、補助事業を実施するSII(一般社団法人環境共創イニシアチブ)に登録されたシステムであること、そして同じくSIIに登録されたエネマネ事業者を通じて導入することが必須条件となっていました。これは、一定の品質基準を満たしたEMSの普及と、導入後の適切な運用を確保するための仕組みです。
また、EMSの導入が対象となる「④エネルギー需要最適化型」を含む申請であれば、ほかの事業区分とあわせて申請するケースでも、エネマネ事業者に手続きを依頼できる仕組みとなっていました。
このため、複数の設備更新とEMS導入を同時に進める場合でも、スムーズに申請を進められます。
引用:SII:令和6年度補正予算 省エネルギー投資促進・ 需要構造転換支援事業費補助金
パナソニックは本制度におけるエネマネ事業者として登録されており、EMS導入に関するご相談や制度の活用についてサポートが可能です。
またEMSの導入だけでなく、断熱窓や空調設備の更新・新設といった設備面の省エネ対策にも対応しています。
ぜひ、お気軽にお問い合わせください。
業務用建築物の脱炭素改修加速化事業(脱炭素ビルリノベ事業)
本制度は、業務用の既存建物の「外皮性能」および「一次エネルギー消費量」の基準を満たし、さらにBEMSを導入してエネルギー管理を行う場合に活用できる補助制度です。環境省・経済産業省・国土交通省が連携して運営しています。
BEMSはEMSの一種で、商業ビルなどを対象に、受変電設備や空調・衛生設備、照明設備を総合的に制御し、エネルギーの最適化を図るシステムを指します。
EMS単体では利用できませんが、断熱改修や高効率設備の導入とあわせて建物全体の省エネ性能を底上げしたい場合には、非常に有効な制度といえるでしょう。
令和8年度の詳細はまだ公表されていないため、ここでは現時点(12月11日)で発表されている情報に加え、令和7年度の概要も踏まえながら解説します。
<令和8年度実施分として12月11日時点で発表されている情報>

引用:業務用建築物の脱炭素改修加速化事業(経済産業省・国土交通省連携事業)
12月11日の時点で公開されている令和8年度実施分の要点は以下のとおりです。
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■本制度を利用する条件
■補助額
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<令和7年度に実施された本制度の概要>
続いて、令和7年度に実施された制度内容を振り返り、令和8年度の制度活用を検討する際の参考にしていきましょう。
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補助対象設備 |
外皮の高断熱化
断熱窓/断熱材 ※既存建物の外皮性能BPIがすでに基準(1.0以下)をクリアしている場合や、補助対象外の設備の導入によってBPIを低減する場合は導入は必須ではない 高効率設備の導入 高効率空調/制御機能付きLED照明器具/業務用給湯器 ※上記以外の設備更新は補助対象外だが、一次エネルギー消費量の削減効果として申請に含めることは可能 BEMSの導入 〉建物全体に加え、空調・照明・給湯器などの設備ごとに、30分以内の間隔でエネルギー使用量を計測・計量し、そのデータを保存・表示・分析できるシステムであること 〉月次で取りまとめたデータを、年1回・5年間にわたり報告すること 〉BELS認証を取得するか、取得予定のシステムを導入すること 〉住居と商業施設が一体となった建物など、複数用途の建築物で申請する場合は、用途ごとにエネルギーを計測すること |
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補助額 |
■対象別の補助額 (1)外皮の高断熱化 製品の種別・能力に基づく定額を、窓の面積や断熱材の施工面積に応じて算出 (2)高効率設備の導入 補助対象経費(設備費・工事費)の3分の1の額 (3)BEMSの導入 補助対象経費(設備費・工事費)の3分の1の額 ■1事業(建築基準法で定める一の建築物)あたりの限度額 [上限]10億円 [下限]200万円 |
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補助の対象 (建物・事業者) |
■対象の建物 建築物省エネ法に基づく用途において以下に該当する建物(一例▽)
■対象事業者
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補助の要件 |
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公募期間 |
2025年3月31日~2025年12月25日23:59 |
※一部の情報を抜粋してまとめています
ZEB普及促進に向けた省エネルギー建築物支援事業
引用:環境省「ZEB普及促進に向けた省エネルギー建築物支援事業」
ZEB普及促進に向けた省エネルギー建築物支援事業は、環境省の「建築物等のZEB化・省CO2化普及加速事業」の一つで、新築・既存の業務用建築物におけるZEB化に資するシステム・設備機器等の導入や、既存建築物ストックの省CO2改修によるZEB化の可能性調査を支援する制度です。
本制度は、主に以下の3区分で構成されています。
- 新築建築物のZEB普及促進支援事業(経済産業省連携事業)
- 既存建築物のZEB化普及促進支援事業(経済産業省連携事業)
- 業務用建築物ストックの省CO2改修調査支援事業
2026年1月時点で公開されている令和8年度の予算案の要点は以下のとおりです。今後、制度の活用を検討する際の参考にしていきましょう。
■補助対象
地方公共団体、民間事業者、団体等
■補助要件
- ZEB基準を満たすこと
- 計量区分ごとにエネルギーの計量・計測を行い、データを収集・分析・評価できるエネルギー管理体制を整備すること
- 需要側設備等を通信・制御する機器を導入すること
- 再エネ設備を導入すること(新築建築物)
- ZEBリーディング・オーナーへの登録を行うこと(新築建築物)
- ZEBプランナーが関与すること(新築建築物)
■補助対象と補助率
補助率・補助上限は、区分①・②の事業が「2/3〜1/6(延べ面積に応じて上限3〜5億円)」、区分③の事業が「1/2(上限100万円)」となっています。
詳細な補助対象と補助率は以下の表のとおりです。
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延べ面積 |
補助率等 |
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ZEBランク |
新築建築物 |
既存建築物 |
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事務所等以外 |
事務所等 |
事務所等以外 |
事務所 |
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2,000㎡未満 |
『ZEB』 Nearly ZEB ZEB Ready |
1/2 1/3 対象外 |
1/4 1/5 対象外 |
2/3 1/2 対象外 |
1/3 1/4 対象外 |
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2,000㎡〜10,000㎡ |
『ZEB』 Nearly ZEB ZEB Ready |
1/2 1/3 1/4 |
1/4 1/5 1/6 |
2/3 2/3 2/3 |
1/3 1/3 1/3 |
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10,000㎡以上 |
『ZEB』 Nearly ZEB ZEB Ready ZEB Oriented |
1/2 1/3 1/4 1/4 |
1/4 1/5 1/6 対象外 |
2/3 2/3 2/3 対象外 |
1/3 1/3 1/3 対象外 |
補助金を活用してEMSを導入するメリット
補助金を活用してEMSを導入する主なメリットは以下のとおりです。
- 初期費用を抑えて経済面での長期的なメリットを得られる
- 持続可能な経営につながる
それぞれ見ていきましょう。
初期費用を抑えて経済面での長期的なメリットを得られる
EMSを導入すると、建物で使用しているエネルギーを見える化でき、データに基づいた効果的な省エネ対策を講じられるようになります。
電気代の削減は長期的には大きな経済的メリットにつながるでしょう。自動制御機能を備えたEMSであれば、自動で設備を制御してくれるので、効率的に省エネ化を進めることが可能になり、エネルギー管理にかかる手間も減らせます。
さらに補助金制度を活用することで、導入時の初期費用を抑えることも可能です。国費が充当されている同一事業の補助金は原則として併用できませんが、地方自治体が一般財源で実施する補助金については、併用が認められるケースもあります。
実際、令和7年度の「省エネ・非化石転換補助金」では、自治体が実施する補助金との併用に加え、税制優遇制度との併用も可能とされていました。
このように制度を最大限活用できれば、初期費用を大幅に抑えつつ、長期的なコスト削減と効率的なエネルギー管理を実現できます。
持続可能な経営につながる
補助金を活用してEMSを導入するメリットは、電気代削減にとどまらず、企業価値や競争力の向上にもつながります。
近年は環境・社会・ガバナンスという非財務的な要素によって投資判断を行う「ESG投資」が拡大しており、環境配慮が企業評価の大きな基準となっています。そのため、省エネに積極的に取り組む企業は投資家から高く評価され、資金調達が有利になる傾向にあります。また、取り組み内容を積極的に発信したり、メディアに取り上げられれば企業の認知度が高まり、結果として売上向上につながる可能性もあるでしょう。
EMSの導入には初期投資が必要ですが、省エネ補助金を活用することでその負担を軽減できるうえ、持続可能な経営を実現する大きな後押しになります。
補助金を活用してEMSを導入する際の注意点
補助金を活用してEMSを導入する際には、いくつかの注意点を押さえておく必要があります。導入するだけで終わりではなく、その後の運用が省エネ効果を左右するからです。
また、より大きな省エネ効果を得るためには、EMSだけでなく設備更新も含めた複合的なアプローチが求められます。
以下では、EMS導入時に押さえておくべき2つの重要なポイントを解説します。
EMSは導入してからが重要
EMSは、導入するだけで自動的に省エネ効果が得られるものではありません。省エネ効果を最大化するためには、導入後の運用が何より重要です。
補助金が出るからという理由だけでEMSを導入しても、活用しきれなければ十分な効果は得られず、結果として投資が無駄になってしまう可能性があります。
そのため、「誰が・いつ・どのデータを確認し、どのような対応を行うのか」といった運用ルールを、あらかじめ明確にしておくことが重要です。さらに、月に1回など定期的な報告やレビューの場を設け、EMSで収集したデータを関係者間で共有・議論する仕組みを整えることで、継続的な改善につなげやすくなります。
また、データの見方や改善への活かし方に関する知識が社内に十分でない場合、自社だけで運用を定着させることが難しいケースもあります。そのような場合には、サポート体制が整ったEMSを選び、導入後の運用定着まで支援を受けることも有効な選択肢といえるでしょう。
パナソニックは、「省エネ・非化石転換補助金」におけるエネマネ事業者として、EMSの導入・補助金の活用、運用まで丁寧にサポートいたします。また、「省エネ・非化石転換補助金」以外の制度にも幅広く対応しており、企業様の状況に応じた最適な提案が可能です。
省エネには複合的な対策が必要
EMSは、あくまで「エネルギーの見える化」と「運用改善」を支援するものであり、設備そのものの性能を底上げするわけではありません。より大きな省エネ効果を得るには、設備自体を省エネ性能に優れたモデルへ更新することも必要となります。
なかでも空調は、建物で使用されるエネルギーの大部分を占めるため、EMSによる運用改善と設備更新の両面から省エネに取り組むことで、より大きな効果が期待できます。

とはいえ、複数の対策を同時に行う場合、初期投資が課題となることも少なくないでしょう。今回紹介した補助金の中には、EMS導入と設備更新を組み合わせて活用できる制度もあるため、事前に確認し、効果的に活用してください。
また、パナソニックの空調用エネルギーマネジメントシステム『Panasonic HVAC CLOUD』なら、省施工で工事負担が小さく、初期費用・月額費用ともに導入しやすい点が特長です。加えて、以下のような機能で確かな空調の省エネをサポートします。
※ 2022年6月~9月に関東地方の物販店舗(約1000㎡ )の2施設で検証。実際の省エネ効果は、使用環境等の条件により異なります。 |
この機会に、運用改善と設備更新の両面から省エネ化を検討してみてはいかがでしょうか。
まとめ
EMS(エネルギーマネジメントシステム)の導入は、エネルギーの見える化と運用改善を通じて、長期的なコスト削減と持続可能な経営の実現に貢献します。
導入にあたっては、「省エネ・非化石転換補助金」や「脱炭素ビルリノベ事業」といった補助金制度を活用することで、初期費用の負担を大幅に軽減できます。
ただし、EMSは導入後の運用が省エネ効果を左右するため、サポート体制の整った製品を選ぶことが重要です。また、EMSによる運用改善だけでなく、空調など主要設備の更新も組み合わせることで、より大きな省エネ効果が期待できるでしょう。
パナソニックの『Panasonic HVAC CLOUD』は、AIによる自動制御で約20%(※)の空調消費電力量削減を実証済みの空調用EMSです。省施工で導入しやすく、わかりやすいUIでエネルギー消費を直感的に把握できる点も強みとなっています。
※ 2022年6月~9月に関東地方の物販店舗(約1000㎡ )の2施設で検証。実際の省エネ効果は、使用環境等の条件により異なります。
パナソニックでは、各種補助金の活用に関するご相談も承っています。どういった機器であれば補助金を申請できるかのアドバイスも可能ですので、補助金を活用した省エネ対策をお考えの方はぜひ一度ご相談ください。




