工場の生産ラインやビルの空調システムが自動で最適な状態を維持しているのは、「計装」という技術のおかげです。この計装は、現代のさまざまな産業を支える重要な基盤技術となっています。
本記事では、計装の基本的な意味や種類、活用の具体例、計装設備の役割などについて、詳しく解説していきます。
計装とは
計装とは、温度や圧力、流量などを「計測」し、そのデータをもとに設備を「制御」する技術のことです。語源は「計測器(計器)を装備する」から来ており、現在では計測から制御までを含めた一連の技術体系を表す言葉として使われています。
計装は制御の対象によって主に以下の3つに分類されます。
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計装の種類 |
詳細 |
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プラント・ファクトリーオートメーション(FA)計装 |
プラント・工場の生産工程における原料受入・投入、製品の組立・検査・搬送などの作業を自動化するための技術
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ビルオートメーション計装工事 |
オフィスビル・商業施設・病院・学校などにある設備(空調/照明/熱源/昇降/セキュリティ等)の稼働を、中央監視システムから遠隔で操作・監視したり、センサーや制御盤の設置により自動制御したりできるようにするための技術 ![]() |
計装の具体例
計装の技術は、私たちの身近なところから大規模な産業施設まで、さまざまな設備や現場で活用されています。ここでは、計装が活用されている場面の具体例として、以下の3点について見ていきましょう。
- 空調設備
- 工場・プラント
- インフラ
具体例①空調設備
ビルや商業施設、店舗などの空調設備には、計装の技術が広く活用されています。以下の流れにより、適切な室内環境を保つよう制御を行います。
- センサーが温度や湿度などを計測
- 計測したデータを中央監視装置に取り込む
- 中央監視装置からの指令により空調の設定を制御
部屋やフロアごとに空調設備を設置する「個別空調」の場合、これまで人の手で行われていたリモコン操作を自動化することなどが計装にあたります。
一方、熱源機で作り出した冷温水を循環させ、建物全体の空調を中央監視装置でまとめて管理する「セントラル空調」では、各フロアやゾーンのバルブ開閉率や冷温水の設定温度、流量などをセンサーで計測し、そのデータをもとに中央監視装置が自動で指令を出すことで設備を適切に制御するのが計装です。
そのほか、ホテルでカードキーを挿すことにより照明や空調が使えるようになったり、オフィスで最終退勤時に自動で空調や照明がオフになったりするのも、計装の具体例といえるでしょう。
このように、計装によって効率的な設備管理が可能になります。
具体例②工場・プラント
工場やプラントでは、製造工程の品質維持や安全確保、業務効率の向上を目的にさまざまな設備で計装が活用されています。具体的には、以下のような制御が挙げられます。
- 一定の火力を維持するよう酸素の供給量を制御
- 基準に沿って工場排水するために、水質を測定し制御
- 原料の投入量をセンサーで検知し、過不足がないよう制御
- 原材料の入ったタンクの温度を測定し、加熱・冷却を制御
具体例③インフラ
インフラ施設においても、計装は重要な役割を果たしています。
例えば水道施設では、安全でおいしい水を供給するために原水の質を分析し、適切な量の薬品を注入する工程が必要ですが、この工程は計装によって自動制御されることが一般的です。
制御の方法はいくつかあり、代表的なものとして以下が挙げられます。
- あらかじめ設定した薬品の注入率に応じて制御する
→原水の水質が安定していて処理量のみが変化する場合に用いられる - あらかじめ設定した水質になるように薬品を注入したあと、水質計器で実際の水質を測定し、その結果(フィードバック)に基づいて薬品の注入量を制御する
→原水の水質、処理水量ともに変化する場合に用いられる - 水質に応じて薬品の注入量を事前に制御する
→水質計器によって水質を分析してから注入量を設定し、偏差が生じる前に薬品注入量を制御する
計装設備の役割
計装設備は、現代の産業活動や私たちの快適な生活を支える重要な役割を担っています。なかでも代表的な役割としては、以下が挙げられます。
- 品質を一定に保つ
- 安全を確保する
- 生産性・快適性の維持
- 省エネ・環境保全への貢献
詳しく見ていきましょう。
品質を一定に保つ
製造現場では、わずかな温度や圧力の変化が製品の品質に大きく影響することがあります。
計装はこうした微細な変動を常に監視し、自動で制御を行うことで品質を一定に保つ役割を果たしています。
例えば、食品工場では加熱温度を一定に維持して製品ごとのばらつきを防ぎ、自動車塗装ラインでは塗装ブース内の湿度や気流を自動制御してムラのない仕上がりを実現するなどの活用事例があります。
人の手では難しい精密な制御を自動で行い、安定した品質を支えているのです。
安全を確保する
計装は、働く人の安全を守るうえでも重要な役割を果たしています。
工場やプラントでは、高温・高圧・有害ガスなど、危険を伴う環境で作業が行われることも少なくありません。計装が活用されることで、パイプ内の圧力が異常に高まっていないか、ガス漏れが起こっていないか、温度が適切かといった情報を常に監視できます。
異常を検知した場合には、自動的に警報を発したり、装置を停止させたりする仕組みにより、現場で働く人が危険にさらされる前に対処することが可能です。
このように計装は、人命を守る安全管理の要といえるでしょう。
生産性・快適性の維持
計装によって設備の安定した稼働を実現することで、さまざまなトラブルの発生を未然に防ぎ、生産性を維持することができます。
例えば工場やプラントでは、わずかな設備の停止でも生産性に大きな影響を及ぼしかねません。計装によって温度や圧力、流量などの常時監視と自動制御を行うことで、品質のばらつきや無理な稼働による設備の故障、事故の発生といったトラブルで業務プロセスが停止してしまうリスクを大幅に抑えられます。
また、オフィスや商業施設、飲食店などの店舗においても、空調の最適化は働く人の集中力やお客様の快適性に直結するため、計装の役割は非常に重要です。
省エネ・環境保全への貢献
地球温暖化が深刻化する現代において、温室効果ガスの排出削減に取り組むことは企業に求められる重要な責務です。
計装は、エネルギー使用の最適化を通じて温室効果ガスの排出削減に貢献します。例えば、空調設備に計装を導入すれば、室内温度などに応じて自動で運転を制御でき、人による過度な冷暖房運転を防ぐことが可能です。
また、快適な環境を保ちながらも電力のムダを抑え、エネルギー効率の高い運用を実現できます。環境に配慮すると同時に、省エネルギー化によるコスト削減にもつながるでしょう。
【空調設備の自動制御システム】Panasonic HVAC CLOUD
計装といえば、大型施設向けのものだと考えている方もいるでしょう。しかし、近年は人手不足や省エネ志向の高まりにより、中小規模施設においても計装のニーズが増加しています。
とはいえ、中小規模の施設ではかけられる予算や工期が限られていることが多いため、省施工で導入できるシステムがおすすめです。
その一つとして、空調設備を自動制御できるパナソニックの「Panasonic HVAC CLOUD」をご紹介します。
本システムは、「空調設備へのアダプターの取付」と「LTEルーターの設置」だけで、クラウドサーバーを通じて制御を行えるようになり、複雑な工事を必要としません。
導入いただくと、以下のような空調管理を任意のPCから行っていただけます。
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スケジュール設定 |
曜日ごと・30分単位で「運転のオンオフ」「運転モード」「設定温度」を設定できる機能。設定内容に応じて自動で運転が行われる。 |
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省エネ設定 |
あらかじめ設定した時間帯に空調を自動的に停止させたり、設定温度が変更されても一定時間後に元の温度に戻したりする機能 |
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警報通知 |
異常の発生を自動で検知して管理者へ通知する機能。設備トラブルの見逃しを防ぐことができる。 |
これらの機能や運転のオンオフ、各種設定は、複数・多拠点の空調設備も任意のPCから一括管理できます。

加えて、AIが「物件」「気象」「時刻」「リモコン操作」などの情報を学習し、外気温や時刻の変化に応じて設定温度を自動調整する機能も搭載しています。
人による過度な温度の上げ下げを減らすことで、快適性と省エネを両立させながら従来の運用に比べて約20%の空調消費電力量を削減できます(※)。
※1年間、関東地方の2つの異なる物販店舗(約1,000㎡)の施設で検証。「設定温度自動リターン」機能(一定時間で指定した温度設定に戻る機能)との比較。
まとめ
計装とは、温度や圧力、流量などを「計測」し、そのデータをもとに設備を「制御」する技術です。
空調設備から工場・プラント、水道などのインフラ施設まで、幅広い分野で活用されています。計装設備の役割は、品質の安定化、安全の確保、生産性・快適性の維持、省エネ・環境保全への貢献など多岐にわたります。
近年は大規模施設だけでなく、人手不足や省エネ志向の高まりを背景に、中小規模施設でも自動制御のニーズが増加しており、省施工で導入できるシステムへの注目が高まっています。
空調設備の計装設計や自動制御システムの導入をお考えの方は、ぜひパナソニックにご相談ください。
「Panasonic HVAC CLOUD」のみならず、さまざまなソリューションをご提供しています。お客様のニーズに応じた最適なご提案をさせていただきます。
