10月 15, 2025
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空調の節電方法は?節電の効果や注意点を含めて解説

空調設備に用いる電力は、建物全体のエネルギー消費の大部分を占めます。そのため、空調設備の節電対策を効果的に実施すれば、大幅なコスト削減が可能です。

しかし、節電を重視するあまり快適性を損なってしまうと、従業員の生産性や顧客満足度に悪影響を与える可能性があります。

本記事では、空調の節電効果から具体的な方法、注意点まで詳しく解説します。

 

空調の節電がおよぼす効果

空調の節電がもたらす効果を理解するためには、まず、空調設備がどれほどのエネルギーを消費しているかを把握する必要があります。

業務用空調は、建物用途にもよりますが建物全体のエネルギー消費において最も大きな割合を占める(以下の図のように非住宅においては約50%)設備です。そのため、運転にかかる電気代も高額になるケースが少なくありません。反面、空調の使い方や設備の見直しなどによって得られる節電効果も非常に大きいのが特徴です。

グラフ

 

業務用空調の電気代はどれくらいなのか

業務用空調の節電に取り組むうえでまず押さえておきたいのが、「そもそも空調がどれだけの電気代を消費しているか」という点です。

とはいえ、業務用空調の電気代は、空調の機種・省エネ性能・設置台数・電力会社との契約内容・設置環境・使用状況といった要因で変動するため、一概に「○○円」と断定することはできません。

それでも、エアコンの消費電力をもとに計算すれば、ある程度の目安を把握することは可能です。下表は、パナソニックの機種(UXPR5YR)を1時間使用した場合を想定して、冷暖房別・馬力別に電気代をまとめたものです。

馬力

1時間あたりの電気代

冷房

暖房

8馬力

177円

172円

10馬力

248円

241円

12馬力

273円

267円

14馬力

316円

326円

16馬力

360円

344円

18馬力

415円

403円

20馬力

431円

446円

22馬力

481円

481円

24馬力

530円

555円

26馬力

605円

598円

28馬力

592円

651円

30馬力

676円

667円

32馬力

716円

688円

34馬力

772円

747円

36馬力

834円

806円

 ※試算条件:
[消費電力]Panasonicビル用マルチエアコン総合カタログ2025より定格消費電力を参考
[使用時間]1時間
[電力量料金(円/kWh)]家電公取協によって定められた目安単価31円/kWh(税込)を使用

よくある質問 Q&A|公益社団法人 全国家庭電気製品公正取引協議会

例えば、8馬力の空調1台を1日12時間365日稼働させた場合、約76万円もの電気代がかかるということになります。

これが複数台となれば当然コストは跳ね上がり、相当な負担となることがわかります。

 

業務用空調の運転にかかっている電気代の確かめ方

業務用空調の電気代を知るためには、その機種の仕様書やメーカーのカタログで消費電力を確認する必要があります。

例えばパナソニックの「UXPR5YR」なら、カタログの冷房定格と暖房定格の欄にそれぞれ消費電力が以下のように記載されています。

image2

消費電力がわかれば、「業務用エアコンの電気代=消費電力(kW)×使用時間(h)×電力量料金(円/kWh)」の計算式で電気代の目安を算出できます

「電力量料金」は契約している電力会社によって異なります。しかし、家電公取協※によって目安となる単価は31円/kWh(税込)とされています。より正確に計算を行いたい場合は、ご契約の電力会社の単価をご確認いただくことをおすすめします。

また、仕様書やカタログなどに書かれた消費電力は、JIS規格の定める一定条件下での測定値であり、実際の使用環境や運転状況によって消費電力は変動します。

※出典:よくある質問 Q&A|公益社団法人 全国家庭電気製品公正取引協議会

 

空調の節電を行う際の注意点

 

 業務用空調は節電効果が大きいですが、節電を重視するあまり快適性を犠牲にしないよう注意が必要です。冷暖房の設定を極端に変更したり、運転時間を制限しすぎたりすると、室内の快適性が損なわれ、従業員の作業効率や顧客満足度に影響する恐れがあります。

こうした問題を防ぐには、省エネと快適性のバランスを適切に保つ工夫が欠かせません

例えば、パナソニックが提供する省エネマネジメントサービス「Panasonic HVAC CLOUD」なら、AIが利用者の日常的な空調設定温度を学習し、外気温度や時間帯に応じて設定温度を自動で調整します。快適性を損なうことなく無理のない省エネを手間なく実現できます。

 

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空調の電気代を節約する方法

ここでは、効果的な節電対策を実施するための具体的な方法を紹介します。


  • 定期的にフィルターを掃除する
  • 設定や使い方を見直す
  • 空調効率を高める工夫をする
  • 省エネ性能に優れた機種に入れ替える
  • システムを活用する

それぞれ見ていきましょう。

 

定期的にフィルターを掃除する

フィルターの目詰まりを起こすと、空気の流れが悪くなって冷暖房の効率が低下し、必要以上に電力を消費してしまいます。取扱説明書を参考にしながら、定期的にメンテナンスを行いましょう

 

設定や使い方を見直す

設定や使い方を見直すことは、すぐに取りかかれる節電対策です。具体的には、以下のような方法があります。

  • 風量を「自動」にする

    「自動運転」は、室温が設定温度に到達したあと、その温度を保つために必要な最低限の風量に自動で調整しながら運転を続ける機能です。
    常に同じ風量で運転するケースと比べて電力のムダが少なくなるため、電気料金の節約が期待できます。

  • 設定温度を見直す

    具体例として、冷房温度を23℃で稼働させるのに対して、28℃設定での運転の方が電力消費を抑えることができます。
    「冷房が強くて肌寒い」「暖房が強くて汗ばむ」といった状況では、心地よさを維持しながら電力消費を減らせる適切な温度設定への変更を検討しましょう。

  • 設定温度を頻繁に変えない

    エアコンは運転開始から室温が設定温度に達するまでに最も電力を消費するため、設定温度を頻繁に変更してしまうと消費電力が増える可能性があります。こまめに調整しなくても心地よく過ごせる温度に設定したり、サーキュレーターなどを併用して室内全体に空気を行き渡らせたりする工夫を取り入れましょう。

  • 季節に応じて風向きを変える

    空気は、冷えると下に集まり、暖まると上に溜まりやすい性質があります。
    そのため、冷房運転では風向きを上向きにして、天井付近から冷気が部屋全体へ降りてくるようにすると効果的です。

    暖房運転では下向きにすることで、足元から部屋全体を暖めることができます。

  • 常に人がいる場合はつけっぱなしにする

    先述の通り、エアコンは運転開始から設定温度へ到達するまでの間に最も電力を消費します。
    そのため、24時間営業の店舗や人の出入りが頻繁な場所では、こまめに切るより電源を切らずに運転し続ける方が節電につながる可能性があります。
    ただし、つけっぱなしはその分電力を消費するため、使用頻度の低い場所の空調は控えるといった工夫が必要です。

  • 運転スケジュールを設定する

    人の出入りが一定の時間帯に集中するオフィスや営業時間が固定されている店舗、曜日や時間帯別の混み具合が予想しやすい店舗などでは、エアコンの稼働時間や設定温度をあらかじめ設定することで省エネ効果が見込めます。
    たとえば、店舗の場合、客足が途絶えやすい時間帯になったら温度を変更するといった方法で、ムダな電力消費を抑えられます。

    エアコンの機種によっては、曜日別・時間帯別に運転開始・停止や設定温度を自動制御するタイマー機能が備わっています。こうした機能を使うことで、余計な電力消費を防ぐことができます。

 

空調効率を高める工夫をする

空調は、運転を始めてから室内を設定温度に近づけるまでの間に、最も多くの電力を消費します。特に夏場は、室内にこもった熱気を一気に冷やそうとするため、冷房機に大きな負荷がかかります。

そのため、運転前に窓やドアを開けて熱気を外に逃がしておくと、冷房が一気に温度を下げる必要がなくなります。結果として、短時間で快適な温度に達し、消費電力も大幅に抑えられます。

さらに、サーキュレーターや扇風機を併用するのも、空調効率を高めるのに効果的です。冷風や温風を室内全体に行き渡らせることで、場所によって「暑い」「寒い」と感じる温度ムラを減らし、必要以上の温度調整を防ぎます。

また、冷たい空気は下にたまりやすい性質があります。そのため、すでに十分に冷えているにもかかわらず、天井付近に設置したエアコンがまだ暑いと判断し、過剰に温度を下げすぎてしまうことがあるのです。サーキュレーターを使って空気を循環させ、室内温度を均一に保てば、このような無駄を減らせます。

 

省エネ性能に優れた機種に入れ替える

現在お使いのモデルが古い場合は、省エネ性能に優れた最新モデルへの入れ替えを検討してみても良いでしょう。

例えば、パナソニックの2012年モデル「PA-P80UM1SX」を、現行品(PA-P80U7SGB)に切り替えた場合で比べてみると、年間あたりの消費電力量の削減効果は43%となります。

1台につき27,100円の電気代削減となり、その節約効果は57%にもなります(※)。

image4

※1台あたりの試算です。
※電気代は(社)日本冷凍空調工業会が定める統一条件で運転した場合の試算です。実際の電気代は、地域やご使用状況によって変動する可能性があります。(統一条件:規格 JRA4002:2013R/地区 東京/建物用途 事務所/冷房の使用期間 4月19日〜11月11日、暖房の使用期間12月3日〜3月15日/使用時間 8:00〜20:00 6日/週 /電気料金単価 東京電力 低圧電力契約))
※電気代に基本料金は含まれていません。
※旧製品の電気料金は、経年劣化による効率低下分を考慮して算出しています。

ただし、空調の節電効果は省エネ性能だけではありません。無駄な電力消費を防ぐために、部屋の広さや用途などに応じた能力(馬力)を選ぶことも大切です。

 

システムを活用する

ここまでに紹介してきた節電方法は、いずれも一定の節電効果を期待できるものです。

しかし、建物の規模が大きい場合は、すべての空調を手動で管理するのは担当者の負担が大きく、現実的ではありません。そこで導入を検討したいのが、自動制御システムです。

パナソニックの「Panasonic HVAC CLOUD」なら、効率的で快適な空調管理を実現します。具体的な機能は以下の通りです。

 
  • 空調の消費電力量や設定温度の可視化

    物件ごとに設置されている空調設備の消費電力量や設定温度の推移をグラフで可視化できます。
    これによりムダな電力消費を見つけ出し、具体的な節電対策を立てることができます。
    データを蓄積して比較することで、節電対策を講じたあとの効果を確認することもできます。

  • 空調運転の一括遠隔管理

    複数拠点の空調の運転状況を一括で確認・管理できるため、スケジュール設定による切り忘れ防止や適切な温度への見直しが容易になります。これにより、消費電力量と管理にかかる手間を同時に削減できます。

  • AI省エネコントロール

    AIによる運転制御によって省エネと快適性を両立させる業界初の機能(※1)を搭載しています。

    AIが施設の情報や利用者の空調設定、気象データ、時刻設定を学習し、外気温や時間帯に合わせて設定温度を自動で調整します。実地検証では、人による過剰な快適運用を抑制することで、年間で約20%の空調消費電力量を削減する効果を確認(※2)しました。

  • 警報メール通知

    空調機器に異常があった場合、エラーコードがメールで通知されます。
    遠隔で異常を確認できるため、特に空調が必要な夏季や冬季に「故障に気づかず機器が使えない」といったトラブルを未然に防ぎやすいです。
    現地へ行くことなく異常を確認できるため、初動対応を効率的に行うことができ、修理や交換の手配も迅速に行えます。

(※1)2023年2月時点 空調業界当社調べ。
(※2)関東地方にある物販店舗(約1,000㎡)の2つの施設で1年間検証。一定時間で指定した温度設定に戻る「設定温度自動リターン」機能との比較。

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まとめ

空調設備は建物全体のエネルギー消費において大きな割合を占めるため、効果的な節電対策により大幅なコスト削減が実現できます。

例えば、フィルター清掃や設定温度の見直し、風量の調整、運転スケジュールの最適化など、日常的な運用改善だけでも相応の効果が期待できるでしょう。さらに、省エネ性能に優れた機種への入れ替えにより、年間数十万円の電気代削減も可能です。ただし、節電を重視するあまり快適性を損なわないよう、省エネと快適性のバランスを適切に保つことが重要になります。

また、手動での管理には限界があるため、自動制御システムの導入もおすすめです。「Panasonic HVAC CLOUD」のようなAIを活用した自動制御システムなら、消費電力量削減を実現しながら快適性も両立できる効率的な空調管理が可能です。

持続可能な節電対策として、このような先進的なソリューションの活用は、今後ますます重要になるでしょう。