9月 9, 2025
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業務用エアコンの点検義務と対応のポイントを解説

業務用エアコンを設置している企業には、「フロン排出抑制法」に基づく点検義務があります。
この法定点検は、地球温暖化の原因となるフロン類の排出を防ぐために定められた重要な制度です。違反すると、罰則の対象になることもあるため、正しい理解と適切な対応が求められます。

この記事では、業務用エアコンの法定点検義務の内容や企業が効率よく対応するためのポイントをわかりやすく解説します。

 

業務用エアコンに点検義務はあるのか

フロン排出抑制法により、業務用エアコンを設置・管理する企業には明確な点検義務が定められており、これを怠ると法的な処罰を受ける可能性があります。 ここでは、業務用エアコンの点検義務の根拠と具体的な内容について詳しく解説します。

フロン排出抑制法による点検義務がある

業務用エアコンは、フロン排出抑制法によって点検が義務付けられています。冷媒としてフロン類が使われている業務用エアコンはフロン排出抑制法の対象機器となっており、所有する管理者は定められた点検を行わなければなりません。

フロン排出抑制法とは、地球環境に深刻な影響を及ぼすフロン類が大気中へ排出されることを抑制する法律です。「設置」「点検」「漏えい防止の措置」「漏えい量の報告」「廃棄」まで、一連のルールが定められています。

■定められている点検の種類
業務用エアコン 点検義務_02
■管理者の定義

ケース

管理者

機器をリース・レンタルしている場合

契約による(※)

分割払いで購入した場合(割賦販売)

売買契約と同様と見なされるため、機器の所有者が管理者となる場合が多い

テナントスペースにある機器

契約による(※)

機器を共同所有している場合

話し合い等で決定する

※例えば、契約において保守・修繕の責務が所有者に指定されている場合には、所有者が管理者となる

 

 

業務用エアコン点検義務を無視した場合

点検は法的義務として位置づけられていますが、違反した際の罰則は、圧縮機に用いられる電動機または内燃機関の定格出力の規模によります。

7.5kW以上の第一種特定製品を1台以上所有する管理者に対しては、基準に照らして著しく点検が不十分であると判断されると、管轄の都道府県知事から勧告→公表→命令といった措置を経て、従わない場合に50万円の罰則が科されます。

さらに、罰金だけでなく、社名が公表される可能性もあり、企業イメージに悪影響を与えるリスクもあります。

点検の実施状況については、行政による抜き打ちの立入検査が行われるケースもあるため注意が必要です。

一方、7.5kW未満の機器に関しては、主に都道府県知事による指導や助言が行われます。このほかにも、フロン排出抑制法では点検以外の管理者に対する義務が課されており、違反した場合にはそれぞれに応じた罰則があります。

 

 

業務用エアコンの点検が義務化されたのはいつ?

業務用エアコンの点検義務は、2001年に制定された「特定製品に係るフロン類の回収及び破壊の実施の確保等に関する法律(通称:フロン回収・破壊法)」がはじまりです。

当初は、整備や廃棄時にフロン類の回収と破壊を義務づける内容でしたが、その後、使用中の機器からも想定以上に多くのフロンが漏えいしている実態が明らかになりました。これを受けて、フロンの製造から廃棄までのライフサイクル全体をカバーするよう、2013年4月1日に法改正が行われました。

この改正により、管理者には機器使用中の「定期点検」や「簡易点検」が新たに義務付けられています。

業務用エアコンの点検義務の詳細

業務用エアコンの点検には「簡易点検」と「定期点検」の2種類があり、それぞれ対象機器や実施頻度、点検方法が異なります。 正しく対応するためには、それぞれの違いや要件をきちんと理解することが大切です。

簡易点検と定期点検の義務について詳しく見ていきましょう。

簡易点検の義務

点検対象機器

冷媒としてフロン類が使われているすべての業務用エアコン

点検頻度

3か月に1回以上

点検実施者

定めなし

点検項目・方法

・異常音、振動、外観の損傷、摩耗、腐食、さび、その他の劣化、油漏れ・にじみ、熱交換器への霜の付着の有無について目視による検査

簡易点検は、冷媒としてフロン類が使われているすべての業務用エアコンを所有する管理者に対する義務です。3か月に1回以上、管理者自身が行うか、もしくは専門業者に委託して実施する必要があります。

安全に目視で確認できる範囲で点検すれば問題ないとされており、特別な資格や専門知識は必要ありません。

定期点検の義務

点検対象機器

圧縮機に用いられる電動機や内燃機関の定格出力が7.5kW以上

点検頻度

[圧縮機の定格出力:7.5kW以上50kW未満]

3年に1回以上


[圧縮機の定格出力:50kW以上]

1年に1回以上

点検実施者

十分な知見を有する者が実施または立ち会う

(社内・社外かは問わない)

点検項目・方法

1.異常音、振動、外観の損傷、摩耗、腐食、さび、その他の劣化、油漏れ・にじみ、熱交換器への霜の付着の有無について目視による検査

2.冷媒の漏えい有無についての直接法・間接法、またはこれらを組み合わせた方法の検査

定期点検は、圧縮機に用いられる電動機や内燃機関の定格出力が7.5kW以上の業務用エアコンを所有する管理者に対する義務です。圧縮機の定格出力によって点検頻度は1年または3年に1度となっており、タイミングが合えば、定期点検を実施することで、簡易点検の代わりとすることも認められています。

点検は、必要な知識や経験を持つ人が行うか、もしくはその立ち合いのもとで実施します。目視による確認に加えて、冷媒の漏えいがないかをチェックすることが求められます。

業務用エアコンの点検義務について詳しくは以下の記事をご参照ください。

業務用エアコンの点検義務を漏れなく対応するために

業務用エアコンの点検はフロン排出抑制法によって義務付けられており、違反すれば罰則が科されるため漏れなく対応することが不可欠です。一方で、点検の実施や点検記録簿の作成・管理には相応の手間がかかります。

とくに簡易点検は資格要件がなく誰でも実施可能ですが、3か月に1回以上の頻度が求められることから、社内対応が難しいケースも多いでしょう。その結果、外部に委託する企業も見られます。

しかし、外部委託には継続的なコストがかかるため負担が大きくなります。こういった課題を解決するのが、常時監視システムの導入です。

2022年8月22日の法改正によって、一定の基準を満たした常時監視システムを導入することで、従来の目視による簡易点検に代えることが可能となりました。

まとめ

業務用エアコンには、フロン排出抑制法に基づく法定点検の義務があり、機器の規模に応じて簡易点検や定期点検の実施が求められます。 点検義務を怠ると最大50万円の罰則が科される可能性があるため、企業は確実な遵守が必要です。

しかし、従来の点検方法では、3か月に1度の目視点検や記録の管理に手間がかかり、外部委託すれば継続的なコスト負担も避けられません。そうした課題を解決する方法として、常時監視システムの活用が注目されています。