ビルメンテナンスは、ビルの整備管理や清掃、警備など、多岐にわたる業務を担っており、建物の快適性や安全性を支えるうえで不可欠な存在です。
一方、ビルメンテナンス業界では人手不足が長年の課題です。専門性の高さや少子高齢化の影響を考慮すると、今後は人材の確保がますます困難になるでしょう。
本記事では、ビルメンテナンス業界における人手不足の現状と原因を整理します。今後の打開策についても、合わせて見ていきましょう。
ビルメンテナンス業界は人手不足なのか

全国ビルメンテナンス協会(※)の調査によると、2015年度から2024年度までの10年間、ビルメンテナンス業界の最大の悩みとして挙げられてきたのが「現場従業員が集まりにくい」という声です。
この項目は調査期間を通じて常に1位にランクインしており、ビルメンテナンス業界の人手不足は一時的な現象ではなく、構造的に常態化していることがうかがえるでしょう。
いかに人材を確保し定着させるかは、業界全体にとって喫緊の経営課題となっています。
※出典元:2025 第55回実態調査報告書|公益社団法人 全国ビルメンテナンス協会
ビルメンテナンス業界が長年にわたり人手不足の理由
ビルメンテナンス業界の人手不足は、単一の原因によるものではありません。以下のような構造的な要因が複雑に絡み合うことで、業界全体の人材確保を困難にしているのです。
- 専門性の高さゆえに人材の育成や確保が難しい
- 賃上げが難しい
- 少子高齢化による生産年齢人口の減少
- 設備管理の需要の高まり
ここでは、人手不足が長期化する主な理由を4つの視点から解説します。
専門性の高さゆえに人材の育成や確保が難しい
全国ビルメンテナンス協会(※)の調査によると、ビルメンテナンス業界の主な悩みとしては「現場管理者が育ちにくい」「現場従業員の若返りが図りにくい」「専門技術者の確保が難しい」といったものが挙げられます。
ビルメンテナンスは人の手でサービスを提供する業種であるため、経験豊富なベテランの知識や感覚的な技術に依存しやすい傾向にあります。
高度な専門性と実務経験が不可欠であることから、そのノウハウを次世代に伝えることや即戦力の人材を確保するのは容易ではありません。
※出典元:2025 第55回実態調査報告書|公益社団法人 全国ビルメンテナンス協会
賃上げが難しい
人材確保のためには賃金を引き上げることが有効です。
しかし、ビルメンテナンスは人の技術や技能に依存する業種であることから、生産費の約70%を人件費が占めており(※1)、大幅な賃金増加は経営を圧迫してしまいます。実際に、賃上げによる経営圧迫がビルメンテナンス業界の課題として年々深刻化しているのが現状です。

加えて、ビルメンテナンスは依頼を受けてサービスを提供する業種であるため、建物オーナーに対する契約料金の交渉が難しいという事情も抱えています。契約を獲得するために価格競争も激化し、収益率が低下するという構造的な課題もあるでしょう。
この2つの制約が重なることで賃上げは進みにくく、結果として人材確保の大きな障壁となっているのです。
(※1)出典元:適正価格契約に向けて|公益社団法人 全国ビルメンテナンス協会
少子高齢化による生産年齢人口の減少

人口の減少および少子高齢化による生産年齢人口の減少により、ビルメンテナンス業界に限らず、多くの産業で人手不足が深刻化しています。これにより、各業界で人材の獲得競争も激しさを増している状況です。
なお、人手不足の一因として離職者・退職者の増加が挙げられています(※)。職を離れる人がいるということは、新たにビルメンテナンス業界へ人材を呼び込むチャンスとも捉えられるでしょう。
しかし、専門性が求められるビルメンテナンスでは、必要な技術や知識を持つ人材を確保するのは容易ではないため、人材獲得は依然として難しいのが現状です。
※出典元:人手不足の深刻化と企業の対応|財務省
設備管理の需要の高まり
現代ではIoTやAIなどの先進技術の活用が進み、スマートビルが注目を集めています。
スマートビルとは、空調・照明・セキュリティなどの設備を自動制御し、利用者の快適性や利便性、省エネなどのニーズに応える建物のことです。先進的設備の導入や高度化が進むなか、それらを安定的に稼働させるために、設備管理の役割はこれまで以上に重要になっているでしょう。
しかし、すでに人手が足りていないビルメンテナンス業界では、こうした需要の高まりが、人手不足をさらに強めてしまう要因となっています。
人手不足が常態化するビルメンテナンス業界の打開策
ビルメンテナンス業界の人手不足を解消するためには、賃金や待遇の改善に加え、労働時間やシフトの見直しによる働きやすい環境づくりが欠かせません。また、契約料金の見直しによって収益性を高める取り組みも重要です。
しかし、全産業で人手不足が深刻化するなか、企業間の人材獲得競争は年々激しくなっています。人材確保が難しい状況でも、顧客との契約を継続するためにはサービス品質を維持・向上させなければなりません。
そこで注目されているのが、ビルメンテナンス分野におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)です。
◇「DX(デジタルトランスフォーメーション)」とは
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データやデジタル技術(IoT・クラウド・AIなど)を活用して、ビジネスモデルそのものを変革させ、新たな価値や競争優位性を生み出すこと |
ビルメンテナンス分野にDXを取り入れることで、業務の効率化やコスト削減が期待できます。さらに、業務負荷の軽減や属人化の解消が進むことで働きやすい環境が整い、人材の定着や確保を後押しする要因にもなるでしょう。
点検や管理の精度向上によってサービス品質の向上にもつながるため、他社との差別化を図る手段としても有効です。
◇ビルメンテナンスにおけるDXの例
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空調の遠隔管理 |
空調設備の運転を遠隔監視・制御し、異常を自動検知する仕組みです。現地巡回によるオン・オフ操作や点検の頻度を減らすことで、人件費の削減につながります。常時システムが監視しているため、異常発生時も迅速かつ的確な対応が可能です。 |
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清掃ロボットによる床掃除の自動化 |
ロボットが代わりに掃除を行うことで人件費の削減が可能になります。定型的な作業をロボットに任せることで、人は細かな清掃や確認作業に注力でき、全体の清掃品質向上にもつながるでしょう。 |
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ドローンによる外壁や屋根といった高所作業の点検 |
足場の設置が不要となり、設置・撤去にかかるコストや人手を削減できます。広範囲を少人数で短時間に点検できるため、人件費の削減にも効果的です。点検期間の短縮により、騒音の発生や室内からの視界遮断といった利用者への影響を抑えられるのもメリットでしょう。 |
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警備の自動化 |
センサーの設置により異常な行動や侵入者を自動検知し通知する仕組みです。人による巡回の頻度を減らすことができ、人件費の削減につながります。広範囲を同時に監視できるため、見逃しを防ぎ、セキュリティレベルの向上が期待できるでしょう。 |
空調設備の管理なら「Panasonic HVAC CLOUD」
ビルメンテナンス業界が直面している深刻な人手不足の課題を、空調管理の側面から解決を支援するのが「Panasonic HVAC CLOUD」です。
従来の設備管理では、管理者が定期的に現地へ赴き、経験をもとに点検・管理を行うのが主流でした。「Panasonic HVAC CLOUD」を導入すれば、PCやタブレットから複数拠点の空調稼働状況を24時間365日、遠隔でリアルタイムに監視・制御することが可能になります。
これにより、移動時間や現地での点検工数を大幅に削減し、限られた人員でより広範囲かつ高品質な管理体制を構築できるでしょう。
「Panasonic HVAC CLOUD」の機能の一例は以下の通りです。
- 空調運転の一括遠隔管理
複数拠点の空調機器がそれぞれ何度に設定されているかを、遠隔で一括管理できます。 スケジュール設定による切り忘れ防止や、設定温度・空調消費電力量の可視化によるムダの発見・見直しが行え、空調消費電力量と空調設備管理工数の削減に貢献するでしょう - 警報メール通知
空調機器に異常が発生した際、エラーコードをメールで通知する機能です。 遠隔で異常を確認できるため、「故障に気づかず空調機を使用できない」といった事態を未然に防ぎやすくなります。 初動対応で現地に赴く手間が省けて工数の削減になるほか、修理・交換の対応の手配もスムーズに進められるでしょう。 - AI省エネコントロール
AIによる運転制御で省エネと快適性を両立する業界初の機能です(※1)。 施設情報・利用者の空調設定・気象情報・時刻設定といった内容をAIが学習し、外気温度や時刻に応じた設定温度を自動調整します。 人による過剰な快適運用を防ぐことができ、実証実験では1年間で約20%の空調消費電力量削減効果が確認されています(※2)。 - 設定温度の可視化
物件ごとに設置されている空調設備の設定温度の推移をグラフで可視化できる機能です。 これにより、ムダな運用を行っているフロアや店舗を発見して具体的な節電対策を実施できるでしょう。
(※1)2023年2月時点 空調業界当社調べ。
(※2)1年間、関東地方の2つの異なる物販店舗(約1,000㎡)の施設で検証。「設定温度自動リターン」機能(一定時間で指定した温度設定に戻る機能)との比較。
まとめ
ビルメンテナンス業界では、専門性の高さや賃金向上の難しさ、少子高齢化といった要因により人手不足が常態化しています。スマートビルの普及で設備管理の需要が高まるなか、限られた人員でサービス品質を維持するにはDXの活用が不可欠です。
遠隔管理やロボット導入などのデジタル技術を取り入れることで、業務効率化と省エネを同時に実現し、持続可能な管理体制を構築することが大切です。
こうした課題を解決するのが「Panasonic HVAC CLOUD」です。PCやタブレットから複数拠点の稼働状況を24時間遠隔監視できるため、現地巡回の工数を大幅に削減できます。さらにAIによる自動省エネ制御で、快適性を保ちながら消費電力量を約20%削減可能です(※)。
※1年間、関東地方の2つの異なる物販店舗(約1,000㎡)の施設で検証。「設定温度自動リターン」機能(一定時間で指定した温度設定に戻る機能)との比較。